勝部 辰朗
編集委員が温泉特集を企画していた。丁度その頃、不用意にも温泉山行を2週続けてやらかした。しっかり編集の服部氏にマークされてしまった。
原稿をトボケてしまおうと決め込んでいたが、ルーム帰りの暗い夜道で服部氏が、例の温泉まんじゅうのような顔をにじり寄せて「お互い、すっきりした気持ちで一緒に山へ行こうな」と脅かす。幼児二人をかかえた良きパパは、恐れおののきペンを持つはめになる。
元来私はものぐさで、山へ行っても積極的には温泉へ入らない。寄り道をするのが面倒くさいのである。そんな私だから温泉についてあれこれ書ける資格はないので積極的に入りたいと思うときの条件を書くことにする。
- ただであること。 6点
500円くらいまでなら許せる。この場合3点。
- 露天風呂であること。 4点
内風呂ではイマイチ気分が出ない。ましてタイル張りやコンクリート壁では銭湯じゃねーと言いたい。
- 混浴でないこと。 0.5点
混浴は、どういう訳かバーチャンしかいない。奥塩原温泉のバーチャン達ときたら我々においでおいでをするのだ。若けえシと入るとホルモンを吸収できて若返るのだと。ホルモン抜かれてジーサンになっちゃかなわんから、タオルで前を隠し顔を引きつらせつつ後ずさりしてしまうのだ。健康のため混浴は避けようね。但し、殆どないが若いギャルばかりの入る混浴の場合は、10点。
- 鉱泉がよいこと。 1点
私は白濁の湯が、いかにも「温泉」という感じがして好きだ。
- 受付のネーチャンの愛想が良いこと。 1点
加仁湯に入ろうとしたが、受付のネーチャンがスカしていて、気分をこわして入るのを止めた。
- 静かで景色が良いこと。 3点
それに加えて、やはり腐れかけた木造の宿が良い。一大温泉郷の大ホテルでは貧乏性のためビビッてしまう。
- 結構疲れる山行を終えた後であること。 7点
温泉に入って本当に嬉しいと思うのはこの時だ。ハードな山行を予定通りやり終えた充実感の中、疲れきった体を湯に浸す。タマリマセンナー。だから、山行を中止して温泉に入った時は、ありがたみもくそもなく、なぜか罪悪感すら涌いてくるのである。温泉は労働者に対する最大の報酬なのだ。
- 身体がくさいこと。 2点
やはり山行をきっちりすると当然身体はくさい。列車の中でいやな顔される。個人装備にキムコを持参すれば別だが、やはり入りたいと思うのだ。
- 身体が冷え切っていること。 3点
冬山を無事に下山して、凍えた身体をとかす。日本はいい国だなー。
以上、当てはまる項目の点数の合計が10点以上になる温泉に、私は積極的に入りたいと思う所存であります。