トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ260号目次

雲取山集中山行
その3 荒沢谷~唐松谷
金子 隆雄

山行日 1986年9月6日~7日
メンバー (L)金子、今村、野田、鈴木(章)

 今年の集中山行は9月7日雲取山集合だったが我々パーティは二日間で荒沢谷と唐松谷を遡行し雲取山へ集合する計画を立てた。
 金曜の夜、西武秩父集合だったが私が駅へ着いた時はだれもいなかったので、集合場所を間違えたと思いお花畑駅まで行ってみたが既に最終電車は出た後だった。みんな三峰口まで行ってしまったものと思い、明日一番電車で行くことにして駅のベンチでシュラフカバーにもぐり込んで寝る。
 朝、駅員にじゃまだから起きろと始発の1時間半も前に起こされてしまう。そのうち他のメンバーがやって来た。全員夕べの最終電車で着いたのだそうだ。三峰口でタクシーが営業開始するのを待って荒沢谷出合いまで入る。タクシーの運転手の言うには今日はずいぶんと水量が多いとのことだ。足ごしらえをしていよいよ沢へと入る。水量の多い沢を飛び石伝いに右に渉り、左に渉りと進んで二つ、三つ滝を越すとすぐ左よりアシ沢が合流する。さらに易しい滝を越えて行くと左に桂谷が分れる。その上は4m、5m、7mと滝が続き水量が多く苦労する。
 ベンガラの滝8mは高捲き、しばらくゴーロ状を行くと深い釜を持つ井戸渕が現れる。このゴルジュは両岸が研かれており、おまけに釜も深いので高捲くしかない。右岸の高捲きに入ろうとしたときゴルジュの中に一匹の犬を見つけた。増水して取り残されたのかそれとも上流から流されて来たのかは判らないが、だいぶ長い間その岩棚にいたらしくガリガリに痩せている。見捨てて行くには忍びず救出作戦を遂行することにした。苔でヌルヌルする所を懸垂下降し、犬を抱きかかえてザイルで引っ張り上げてもらう。食べ物を与えるとろくに噛みもせず飲み込んでしまう。しばらく我々の後をついてきていたが、徒渉を始めると何処へともなく姿を消してしまった。
 沢が大雲沢と北雲沢に二分される付近からポツポツ雨がやって来た。大雲沢へと進み最後の詰めは草付きのガラ場を登り途中で右の尾根へ上がり不明瞭な踏跡を辿ると三条ダルミと雲取山荘を結ぶ登山道へ出る。雲取山は明日のためにとっておき捲道を通り、富田新道を下り唐松橋の少し上の空地にツェルトを設営する。夜になって大雲取谷パーティがやって来て同じ場所に幕営する。
 次の朝、一足先に出発した大雲取谷隊を見送り我々も出発する。唐松谷も水量が多い。沢に入るとすぐに小さな滝が現れ、それを越すとしばらく滝はないがやがてこの谷最大の2段15mの野陣ノ滝に出合う。左岸より大きく高捲く。次の大滝12mは古い溯行図によれば左岸を高捲いた後、懸垂下降となっているが歩いて降りられる。ナメ滝をいくつか越して行くと滝もなくなりやがて唐松林道と交わる辺りで林道へ上がる。
 少し行った分岐でパーティを解散し各自のペースで雲取山頂へ向かう。山頂へ着いたのは11時頃だったと思う。我々が一番乗りだった。やがて聞き覚えのある声で下の方から「乾杯」という声が聞こえてきたが姿は見えない。しばらくして鴨沢から登って来た連中が来た。次に来たのは大雲取谷パーティだった。昨日の夜、我々のパーティに合流するはずだった荒川君が、先週の小川谷に続いて単独で唐松谷を登ってやって来た。
 集合予定時刻に少し遅れたパーティもあったが、午後3時過ぎ全員山頂に集まった。全員無事とはいかなかったみたいである。小さなケガをしている者が結構いたようである。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ260号目次