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特集 山の食事
その5 山での酒の肴
江村 皦

 山に行って一杯やろか、というのは飲んべい山屋の口癖みたいなものだ。酒は結構あるが、肴があまりない。だいたいピーナツや柿のタネなどはあまりうまくなくパッとしない。
 そこで、山での酒の肴をいくつか上げてみることにした。下界でも春夏秋冬があるが、山ではそれがもっとはっきりしている。人間贅沢なもので、それぞれ好みが違い、夏は夏の食べ物を好み、冬は冬の食べ物を好むので勝手なもんだ。
 春はなんといっても山菜である。ウド、タラノメ、コシアブラ、ハリギリ、ウルイ(おおばぎぼしの芽)、三ツ葉アケビの芽、根曲など上げればきりがない。だいたい天ぷらなどにするが、天ぷらは油や天ぷら粉などめんどくさい。一番簡単なのは、物によるが、ただ湯がいて酢ミソ、マヨネーズなどで食べれば結構いける。酢ミソなどは家で作って行くとよい。ただし、ゼンマイやワラビのような、あくの強い物はとても食べられたものではない。
 夏は、山菜も大きくなり食べられたものではなくなるので、ザックに入れて持って行かなければならない。そうすると軽いのがいい。野菜などはピーマン、ナスなど軽いし、意外と日持ちがいい。それに今はやりのマーボナスの素など、なんやらの素というやつを使えばいいわけだ。もう一つはワカメとチリメンジャコの酢の物。酢の物は夏の暑い時など身体にいいし、酒の肴にはもってこいだ。キューリなどあれば尚よい。
 秋になるとキノコの季節である。キノコは湯がいて大根おろしなどがとてもうまいが、山では大根などなかなか持って行けない。その代りにカツオブシなど振りかけてもなかなかな味である。ただし毒キノコだけはくれぐれも気をつけて。
 冬は雪の中なので、なにも探すことも採ることも出来ない。おまけに寒いだけだ。するとやはり鍋物で身体を温め一杯やるのが一番うまいだろう。でも一般には季節を問わず酒の肴は、スルメや丸干しなどの魚介類の乾燥物や、クンセイなど。ただし塩からい物は後で喉が乾くのでよした方がいい。それと半干し、生干しは食べてうまいが腐りやすいので注意。他にチーズ、サラミ、干しブドウ、チョコレート、ポッキーといった子供のお菓子類など。それにこれらは非常食にもなる。でも飲んべいは肴などなくても酒さえあれば鼻でもつまんで一杯やっか。


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