トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ262号目次

風穴沢マイナーリッジ
金子 隆雄

山行日 1987年5月23日~24日
メンバー (L)金子、井上(博)、高橋(清)

 5月23日、越後湯沢よりタクシーで旭原へ向う。足拍子川沿いの林道の途中までタクシーで入る。林道はやがて細い踏跡に変り、経木ノ沢を渉り、コマノカミノ沢出合い付近で踏跡もなくなる。右岸を高捲き前手沢出合いで沢床へ降りるが、ここまでは結構悪い。この先沢は全て雪渓で埋っており楽になる。右に前衛スラブを見送り、次に出合う沢が風穴沢だ。出合いからのいくつかの滝、二段70mの大滝も埋っており、急な雪渓を登りつめると取付きに至る。
 風穴スラブとの中間尾根に向って2本の明瞭なリッジが延びているが、上側がメインリッジ、下側がマイナーリッジとなっている。
 今まで小康状態を保っていた天気だったが、ここにきて本格的に降ってきた。雨が降ってきたからといって引き返すわけにも、ビバークするわけにもいかず、登るしかない。メインリッジは所々にブッシュが出てきたり、部分的に岩が脆いところがあったりするが、全体的には乾いていれば快適なリッジの登攀が楽しめるだろう。だが今回は雨の中で、おまけに残置ピトンなどもほとんどなく、思いがけない程時間がかかってしまった。マイナーリッジは最後に10m程の懸垂下降で風穴スラブとの中間尾根に合流する。
 実をいうとこの懸垂下降するまで我々はメインリッジを登っているものだと信じていたのである。メインリッジは懸垂下降など出てこないので、最後の最後でルートを間違えたことに気付いたのである。登攀を終え一息ついて中間尾根を稜線に向って歩きだすと、すぐにメインリッジが合流しているピークに行手を塞がれる。ブッシュ混じりのこのピークはたいしたことがないと思い直登したが、途中で行詰ってしまいザイルを出す。
 全員がこのピークを登り終ったときには、辺りは既に真暗になっていた。ヘッドランプの灯を頼りに稜線を目指す。20時ごろ細い稜線上の登山道に出た。すぐにツェルトを張り中に潜り込む。この時の悲惨な状況とはおよそ不似合いな豪華な食事を飢えた腹に詰め込んで、雨が染み込んで水溜まりのできているツェルトの中で眠りにつく。
 5月24日、今日も朝から雨である。朝食もそこそこに出発する。前手沢のコルまで稜線通しに下り、前手沢のコルより荒沢へ降りる踏跡らしきものへと入る。下り口に赤布がありすぐにそれと判る。一旦荒沢へ降り立ち、雪渓上をしばらく下ると雪渓が途切れており、左岸を捲いて再度雪渓上に降り立つ。右岸にかすかにそれと判る踏跡が続いているのでそれを辿る。この道は地図にも載っている登山道だがほとんど廃道に近く、時々道がなくなってしまう。それでも下るに従い道も明瞭になってきて、約2時間で林道に到着し、約30分の林道歩きで土樽駅に着いた。

〈コースタイム〉
23日 林道(9:00) → 前手沢出合い(10:00) → マイナーリッジ取付き(10:15) → マイナーリッジ終了(18:00) → 稜線(20:00)
24日 稜線(10:00) → 前手沢のコル(10:20) → 林道(12:00) → 土樽駅(12:30)

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ262号目次