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春山合宿
その2 北岳バットレス第四尾根
竹内 美智子

山行日 1987年5月2日~5日
メンバー (L)金子、高橋(弘)、高橋(清)、竹内

 5月4日、(月)。朝3時、眠い目をこすりながらむっくりと起き上がる。今日は天気も良さそうだし、いよいよバットレスに登れる。しかし、きのう雨で停滞となって気勢をそがれたせいか、のんびりしすぎたせいか、今一つ行くぞという緊張感が足りない。他のメンバーもなんとなく元気がない。案の定、金子さんが具合が悪くなり、行けなくなってしまった。そして、高橋(清)さんも、雪が思いの外多いのでやめておくと言う。結局、高橋(弘)さんと二人だけになってしまう。
 御池から二俣までは樹林の中を30分、そこから大樺沢を登る。雪がまだ凍っているのですべりやすいが、傾斜がないのでアイゼンをつけるほどでもないと、そのまま歩く。二俣付近に5~6張のテントが張ってあり、どんどん人が登ってくる。彼らはアイゼンをつけている分速い。別にあせる必要もないだろうとのんびりかまえていたが、後で大きく後悔することになる。
 雪渓をDガリーの大滝のあたりまでつめると、大滝はもちろん雪の下だ。下部岩壁は半ピッチぐらいは雪にうもれているのだろう。十字クラックがちょうど雪の上に出ているが、氷の滝になっている。私が登りたいと思っていたピラミッドフェースはつららにおおわれていて、しかもそれがどんどんとけて落ちてきている。とても登れる状態ではない。
 ここでアンザイレンして第五尾根の支稜に取り付く。2ピッチ登り、2ピッチトラバースすると、四尾根の取付きである。ここで1時間余りも待たされる。なんと、さっき雪渓を登ってきた人、全部が四尾根に取り付き、しかもこれが一つのパーティなのである。スタンスはここホールドはどこと、登りながら岩登りの講習会をやっているようなさわぎ。とても待っていられないので、ブッシュの中やピンの少ない方を登って追い越しをかける。それでも10人以上のパーティだから、なかなかぬけない。ずい分途中で待たされたりする。パーティの間に入ったら、あからさまにイヤな顔をされる。第一のコルでようやく全員を追い抜く。ここまで6ピッチ。ルート図では3ピッチであるが、ルート図の取付きの下に3ピッチほどある。核心部の5mのフェースは、雪で半分以上うまっていて、あっけなくすぎる。ナイフリッジからマッチ箱の頭へ。アプザイレンでマッチ箱のコルへ下りここから2ピッチで登攀終了となる。
 終了点でアイゼンをつけ、ザイルをシングルにして雪稜を登る。まっすぐ登っていくと岩稜にぶつかる。それを登っていた人もいたが、いやらしいので、先行していた人にたずねると、左へ行った方がいいと教えてくれた。ずっと雪の上を左へまわりこんで行き、最後に小さな雪庇を越えて稜線に出た。小憩の後、稜線をたどり、草すべりから御池に帰った。
 夏の四尾根は、特にむずかしい所もなく、快適に登れる。それゆえに、私は少し甘く考えすぎていたようだ。夏と春では大きく違う。ちょっとした所でも、雪が少しついているだけで、私にはとても恐く感じられた。長いルートなので特に後半は疲れてしまい、弘道さんにほとんどリードをおまかせしてしまった。もっと体力をつけなければと反省しています。

〈コースタイム〉
御池小屋(5:00) → 五尾根支稜取付(6:50~7:15) → 四尾根取付(8:45) → 稜線(15:55) → 御池小屋(17:20)


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