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入山尾根~刈寄山~舟子尾根
服部 寛之

山行日 1987年3月1日
メンバー (L)今村、服部

 今日は今村さんリーダーの奥多摩藪漕ぎ山行である。"ヤブコギ"だと思うと、朝家を出る前から力んでしまった。なにせ僕は藪漕ぎ山行なんて初めてなのである。茅ヶ崎から相模線で橋本へ。相模線はその名の通り相模の国の野原をのんびり南北に突っ切って動く(走るではない)線である。動力はディーゼル。車窓から下を見ていると、線路の枕木がちゃんと数えられてしまうくらい徹底した速度で動いて行く。だから、丹沢の山々をじっくり観察できるのがじれったいほど嬉しい。橋本から横浜線で八王子へ。そこから徒歩5分で京王八王子駅に7時半ごろ辿り着いた。間もなく今村さんも姿を見せる。あとはヨーカンが来ると言う。だがなかなか現われない。ヨーカン宅に電話すると、何と本人がでた。
 京王八王子駅からバスで終点の小津町へは35分位で着く。身支度を整え、いよいよ出発である(8時50分)。先ずは地図とコンパスで現在位置を確認。こういう山歩きでは、出発時のこれが何より大事だと指導を受けた。道路のすぐ脇の藪の中が椎茸栽培の作業所のようなので入ってみると、案の定上に登って行く仕事道があり、それを辿る。5分程で傾斜が弛んだ辺りには、珍しい事に、木材搬出のための横木が等間隔に埋め込まれていた。この仕事道は尾根を左に巻いて下って行くようなので道を外れ、木に掴まるようにして尾根に上る。尾根には明瞭な踏み跡が続いている。それを辿ってしばらく北上すると、やがてP390に至る(9時20分)。ここがコースのポイントで、ここからは西へ向うことになる。踏み跡ははっきりしているが、そのまま北上する踏み跡もあるので注意しなくてならない。左手に張られたバラ線に沿って北西に進む。やがてしばらく上りが続くとP536である(10時15分)。ここは展望が良く、大岳山を初めとする奥多摩の山々や五日市市街が見渡せる。ここで腰を下して食事にした。
 P536からは西方に一旦下り、再び尾根を上って行く。途中大きな採石場を右下に見ながら1時間もすると、やや開けたなだらかな場所に出たので、再び腰を下して一本。(P648、11時40分)。今村さんお手製のマドレーヌをむしゃむしゃやっていると、西の方からリュックを背負った単独行のおっさんがやって来た。こんな場所で人に会うとは、向こうも驚いたようだった。おっさんは、僕らが来た道を逆に辿って下りて行った。そこからは僅か50m足らずで今熊山と刈寄山を結ぶ山道にとび出た。ずっと踏み跡がバッチリあったので、想像していた藪漕ぎ程手応えが無く、何だかあっけなく抜けてしまった感じ。もっとも、こんなのを藪漕ぎとは呼ばないのかも知れないが。
 山道を辿り、25分程で刈寄山に到着(12時20分)。再び同じ山道を引き返し、今度は舟子尾根に入る。今熊山の道標を見て左へ行くと舟子尾根である。すぐにでかい送電塔があり、その下は開けた草地で昼寝にもってこいだ。ひっくり返っていたら雪がちらついて来たので、急いで出発する。こちらの尾根も踏み跡はバッチリ。P509から右の支稜へ入り、その末端から下りた所が逆川の川原である。その少し上流に金剛ノ滝があるので見に行く。小さな流れを右岸から左岸に飛び越え、岩にくり貫かれた3m程の穴をくぐると、浅い滝壷にしぶきが落ちており、岩の上に金剛様が祀られていた。時折雪がちらつく天気では少々寒いが、夏の暑い時期なら格好の涼み場所になろう。
 金剛ノ滝からは逆川の北側の山を越えて広徳寺へ行った。この寺は由緒ある寺らしく、なかなか渋くて良い。今村さんもお気に入りの場所だそうだ。たいそう立派な古い門があり、境内にはごんぶつという巨木が何本か立っていた。広々とした畑の中の道を30分程歩き、五日市のバス営業所から京王八王子駅へ戻った。
 今回天気は晴れから曇り、しまいには時折雪が舞ってしまったが、地形図とコンパスを頼りに藪を歩くという経験は、明瞭な踏み跡があったとはいえなかなかおもしろかった。

〈コースタイム〉
京王八王子(8:10)(バス) → 小津町(8:45~50) → P390(9:20~30) → P536(10:15~35) → P648(11:40~55) → 刈寄山(12:20~30) → 鉄塔(13:05~25) → P509(13:50) → 金剛ノ滝(14:35~45) → 広徳寺(15:05~30) → 五日市営業所(16:00)


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