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小楢山
藤居 陽子

山行日 1987年3月15日
メンバー (L)原口、堀田、田保、藤居

 3月15日、快川禅師で有名な恵林寺、精進料理の放光寺を右に、タクシーは冬枯れた林の続く林道に入りどんどん進む。
 焼山峠で下車して、乙女高原と反対の方向へ向かう。山名の「ナラ」とは緩やかな傾斜地の意味だそうだが、灌木の下に雪の白い衣で覆われた、なだらかな起伏が続く。木々の芽吹きはまだ固いが、根の周りには既に黒い土の輪が出来ており、春の兆しが感じられた。残雪の上には、三つずつ穴の寄っている兎の足跡が斜めによぎっている。風もなく、緩やかな上り下りに四人のペースが揃う。日頃のうるおいのない心が段々とゆるんで来る。
 幾つかの丸いなだらかなコブを越えて、小楢の株があり幅広い斜面をのぼり詰めると、山頂の錫杖が原である。「万歳ですか?」と堀田さんの声が後ろに聞こえる。眼下には塩山の町、遠くには山ひだを残雪でひときわ険しく装った八ヶ岳が、浮かんでいる様に見えた。
 ひとしきり展望を楽しんでから、あずまやの中で遅い昼食をとる。椎茸、しめじ、舞茸まで入った関西風すきやきをお代わりして、アップルパイでしめくくり。ごちそうさま!
 冷たくなってきた手をこすりながら、母恋し道へ下山開始。こちら側のほうが雪が多く小楢峠では、頂上を諦めて帰った人の足跡が沢山残っていた。
 展望もなく、石がゴロゴロして歩きにくい七曲りを過ぎて古那羅山開山碑へ、さらに林道を下り中牧へ着く。山の中腹から見渡すと、限り無く人工的に育てられた葡萄、桃等の果樹園が広がっている。人工の美もまた楽しい。皆と、この美しさに見とれながら畑道を下り、のどかな山行を終わった。

〈コースタイム〉
塩山駅(10:50)(タクシー) → 焼山峠(11:30) → 小楢山(13:15~14:30) → 達磨岩前(15:25) → 中牧入口(17:00~17:20)(タクシー) → 塩山駅(17:40)


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