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夏合宿 穂高・涸沢・夏
安田 章

山行日 1987年8月13日~16日
メンバー 高橋(弘)、金子、荒川、井上、竹内、升田、甘楽、秋場、安田

 一人で歩いてみたい、そんな気持から合宿の5日前に山に入った。コースは烏帽子岳から槍ヶ岳を越える裏銀座。そして涸沢へ。
 初日は奈々倉山荘で一泊。温泉につかりノンビリ。それから4日かけて涸沢に入った。この間夏らしい天気が続き、展望を存分に楽しみ愉快な稜線漫歩。それにしても仲間が待っているという思いはうれしいもの。一人で歩く山も気ままでよい。しかし冗談を言い合いながら登るのもさらに楽しい。涸沢で皆の顔を見た時は実にうれしかった。
 合宿中の天気はあまり良くなく、ガスっていて景色をながめることはできなかった。それでも2日目、3日目の2日間、北穂から涸沢岳と前穂の北尾根を登ってきた。
 北穂から涸沢岳へのメンバーは、完全装備の秋場さん、強いお姉さんの甘楽さん、ドラエモン歩きの升田さん、雨で岩登りができず、おまけについて来た荒川君、そして私と以上5人。
 朝、テントから顔を出すと冷たいものが顔をうった。雨だがたいした降りではない。とにかく北穂まで登りましょ、ということで支度をした。幸いたいした雨ではなく、北穂の頂上ではカッパを脱いだ。でもあたりは一面のガス。何も見えない中の南稜の登り。途中で一本とった。程なく北穂山頂に着く。風もなく意外に暖かい。ガスで見通しがきかず、方向さえもわからないくらい。それでも前穂や槍、富士山の方を指して見えた気分を味わった。
 秋場さんはコーヒーを沸す、そして他の登山者に誰彼となく声をかける。韓国のパーティとおもわれる一行に、たのまれもしないのにカメラマン役を買ってでる。
 升田さんは北穂のTシャツを買って喜んでいる。無邪気なものだ、という私もすでに同じものを着ている。
 写真を撮ったり、パンを食べたりしているうちに少し明るくなってきた。雨も降ってきそうにないので、涸沢岳へ行ってみようということになった。荒川君は涸沢へ戻った、みんなでさようなら。
 4人で涸沢岳へ向かう。一般の縦走路ではあるけれど岩場が続き気がゆるせない。落石に注意しなければいけない。涸沢岳の頂上は多くの登山者でにぎわっていた。ガスの切れ間に、かすかに奥穂が見えたような気がした。升田さんは素直によろこぶ。すぐ下に見える穂高山荘で休んでからザイテンを下り、涸沢に戻った。
 翌日は甘楽さんと前穂北尾根に行く。雨こそ降っていないがまたもガスの中、5・6のコルへの登り1時間。予想通り私たちの前に10人くらい登って行く人がいる。5峰、4峰は難なく過ぎた。3・4のコルでは待つこと40分。吹きつける風に寒い思いをした。3峰の登りではザイルを出した。待ち切れぬ人はザイルなしで登っていくが、あまりすすめられない。万が一のこともあるのだから。そこを過ぎると2峰は知らぬ間に越え、前穂の頂上に着いた。甘楽さんは少し物足りぬ様子。でも行きたいと思っていた北尾根に登ったのだから、うれしかったのだと思う。
 甘楽さんは感情をあまりおもてに出さない、大人だ。いつもたんたんとし、ひょうひょうとしている。時折少年のような表情を見せて、一緒に登る者を楽しい気持にさせてくれる。
 吊尾根からカッパ橋がかすかに見えた。奥穂の山荘で昨日と同様に休んだ。ガスの中、この小屋では一度も晴れたためしがない。涸沢に帰りつく。
 左ひざを痛めて北尾根に一緒に行けなかった升田さんが、テントの中をきれいにしてくれていた。ありがとう。行けなくてとても残念そうだけど、チャンスはいくらでもあるのだから。
 しめて9日間。前半は一人。後半はみんなと一緒。楽しい山行だったしまた、ごちそうさまでした。


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