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一ノ倉沢
竹内 美智子

山行日 1987年9月27日
メンバー (L)高橋(弘)、金子、中沢、廿楽、荒川、竹内

 私にとっては数年来の宿題である三スラに登ろうという計画でやって来たのだが、雪渓が消えてしまう秋はアプローチが大変で、中央稜取付きのテラスに着くとすでに8時、今日はもう時間的に三スラは無理と判断して、奥壁ダイレクトに登りたいという金子さんの言葉につられて南稜テラスの方へ向かう。ところが、烏帽子奥壁はぬれていて状態が悪くこれもパス。しばらくそこで悩んだ結果、私と金子さんはダイレクトカンテへ、他の4人のメンバーは南稜へと向かうこととなった。金子さんはダイレクトカンテには7月に登ったばかりだったのだが、ダイレクトカンテに行きたいと主張した私につきあってくれたわけである。
 ダイレクトカンテはアンザイレンテラスからアプザイレンして取付く。1ピッチ目は草付から簡単なフリーでせまいテラスに着く。ここで先行パーティを待つ。しっかりビレーをとり、ザックもおろしてカラビナをかける。人一人がようやく立てるようなところに足を空間に投げ出して腰をおろす。くもっていた空もいつのまにか、すっかり晴れ上がっている。目の前には滝沢スラブの雄大な岩壁がそびえている。三スラを登っている人のコールが良く聞こえる。ときどき大きな落石音が響く。それらを子守唄がわりに、ついウトウトしてしまう。自分がこれから登らなければならない壁のことも忘れて・・・・・。
 2ピッチ目、金子さんはトップで、あっという間に登ってしまう。私といえば、単純なアブミのかけかえで簡単、のハズなのだが、なぜかそうはいかない。3ピッチ目私がトップで登り始める。3mぐらいのところでランニングビレーをとり、その上のピンにアブミをかけてのり、さらにその上のピンにアブミをかけようとする。不安定な姿勢で立ちこみ、一生懸命体をのばす。あとちょっとで届きそう。あっと思った瞬間、天と地が逆転して宙ぶらりんになっていた。幸いなことに怪我はかすり傷程度である。すぐにとめてくれた金子さんに感謝。気をとり直してまた登ろうとしたが、何となく手に力が入らない。怪我のためというより、落ちたショックのせいだろうか。くやしいけれど、無理は禁物と自分にいいきかせて(というより自分にいいわけして)金子さんにトップをかわってもらう。
 それでも4ピッチ目は何とかトップで登る。登っている最中に、テールリッジを下降中の南稜パーティのメンバーとビレー中の金子さんが、冗談を言いあっていたが、こっちはそれどころじゃなく、冷や汗もので登る。
 終了点からはすぐに北稜に出られ、懸垂下降する。すっかり遅くなってしまったので、みんな帰ってしまったんじゃないかと心配しながら下りたけれど、みんなはちゃんと待っていてくれた。それにしてもまた今年も三スラに登れなかった。

〈コースタイム〉
一ノ倉沢出合(6:05) → 中央稜取付テラス(8:00) → ダイレクトカンテ登攀開始(9:20) → 登攀終了(15:10) → 出合(17:35)


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