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後山川・青岩谷
佐藤 明

山行日 1988年5月15日
メンバー (L)佐藤明、野田、服部、大久保、今村、千代田、小泉、小林(健)、(小林、堀場)

 春、山菜の季節。どこか山も収穫も、そして温泉もと三拍子そろって楽しめるところで例会を持とうと以前から計画していたのだが、ひょんなことからわさび採りなら沢も楽しめるのでぜひ参加したいという欲にかられた会員数名から企画するよう命ぜられたのが係を持ったいきさつである。
 あれよあれよと言っているうちに参加人数が10名にもふくれ上がってしまい、責任あるリーダーとしては、あまりワサビワサビと私欲にかられないように、とメンバーを制するのが困難な程であった。
 青梅線奥多摩駅に集合し、大久保号と未入会の堀場号とに分乗して青岩谷出合いの林道終点に向かう。あいかわらずの狭いでこぼこ道で時間がかかり、現地着は0時30分。ジャンボを張っての宴会となり、一次会終了は午前2時。二次回は4時にも及んだ。
 翌5月15日、起床6時。割烹もみぢのオーナー小林さんは既に単車で到着していた。なんでも朝4時に荻窪の店をしめて、一睡もせずに出てきたとのこと。小雨の中ご苦労様でした。
 小林さんは間もなく先に行っていると言い出発したが、我々は40分遅れの7時発。ここからすぐに青岩谷に入り約1時間で落差25メートルの青岩大滝だ。直登は無理なので左側の急斜面を登り、登山道を青岩鍾乳洞にたどる。ここで小林さんと落ち合うはずだったが、彼は待ちきれずに既に先行してしまったようで我々も9時過ぎ出発し再び沢に入った。
 ここ青岩谷は雲取山に南面からつきあげる沢だが、遡行対象としてではなく東京付近で岩魚の釣れる谷として有名だ。登山者よりも釣り師が多いということは滝場が少なく歩きやすいということもあるが、半面ゴミが多く捨てられており、苔むした深山の雰囲気が損なわれているのも事実である。そのためかこの沢を好む山屋はあまりいないようで残念だ。
 青岩谷本流は悪場がほとんどなく物足りないが、予定通りワサビ田が続いているのはうれしい。それも既に廃田となっているため余り好いものはないが、罪の意識なく取ることが出来る。
 一般にワサビは根(本当は茎とのことだが)しか利用されていないが茎や葉もなかなかすてがたいのだ。白い花はおひたしにするとなかなかいける。野田さんは皆が一生懸命根を掘っていたときに花だけを摘んでいたのは、本当の味をよく知っているからだろう。そして茎の三杯酢漬けは酒のさかなとしては絶品で、あのつーんというワサビ独特のからみがなんとも心地よい。作り方は至極簡易。ぜひ作ってみてほしい。ちなみにワサビの旬は花の咲く今ごろである。
 さて、話を再び遡行に戻そう。降り続く雨で体が冷えてしまったため、10時10分、我々ワサビ大好き隊は予定より手前の机沢をたどって登山道に戻ることにする。途中ワサビ田管理小屋のわきを通り、三条ダルミへの登山道着11時20分。
 尾根は風も強くますます体が冷えるため、目標の雲取山は割愛し三条の湯に下山となる。12時25分着。ここでお昼を取っていると小林さんがひょこひょこと降りてくる。事情を聞くと、ゴム長のまま我々と同じルートを先行し、さらには強風の雲取山まで行ってきたとのこと、さすがは4大陸最高峰の制者だ。
 ここで小休止のあとは三条沢ぞいの登山道を下り、13時すぎ駐車場に帰着。その後全員で奥多摩駅まで行き解散となる。駅前のみやげ物屋をのぞくことしばし。ヘッヘ今日俺が収穫した生ワサビはしめてン千円だな。皆様お疲れ様でした。また私の三拍子そろった例会にもよろしく。

付録 ワサビの茎漬けの作り方

  1. ワサビの茎を3センチ位の長さに切り塩でもみ、あく抜きをします。
  2. ざるにあけ、80度位のお湯を上からかけ、また絞ります。
  3. タッパーなどの密閉容器に三杯酢を作り、暖かいうちに漬け込みます。
  4. 冷蔵庫に一晩で、激カラワサビ漬けが完成です。
    涙を流しながら召し上がれ。

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