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春山合宿 八方尾根・丸山集中
その2 鹿島槍・小泉パーティ
小泉 周子

山行日 1988年5月1日~5日
メンバー (L)小泉、荒川、田中、千代田、大石

 5月1日、信濃大町で田中君と合流しタクシーで大谷原へ向かう。ここで用を足し、朝食を済ませて装備の配分をする。林道を1時間程タラタラと歩いて西沢の雪渓へと入る。1時間位登ったあたりの右の急斜面をつめると高千穂平へ一挙に出る。風は少々あるが青空の中、昼寝をする者もいたぐらいのんびりとして冷池へ向かう途中、鹿島の北峰からパラセールが飛び立つのが見えた。風に乗って空を飛んでいるのを横目に、頂上直下のトラバースに入る。雪がけっこうついていて踏跡もバッチリだったので思う程ではなかった。冷池からは剣岳が良く見えた。
 2日、朝から曇。6時30分に出発しようとすると急にガスってしまい雨も降ってきた。この日はキレットを越える予定だったので雨とガスの中での行動はさけるため、再びテントを張り様子をみることにした。雨と風は強く、フライを張っていないテントに雨が浸み込んでくる。しかし、それがどうしたと皆は気持ちよさそうに寝ている。やがて10時。雨も止み、今だと思い出発する。かなりの強風を受け布引岳、鹿島槍と目指す。鹿島の南峰では写真をそそくさと撮りすぐ下山となる。これからは雪も多くなり足場も不安定となっているので、北峰を巻いたコルでアイゼンをつける。とにかく、強風に耐えるだけで体力を消耗してしまいそうだが、キレットまではほとんど下りなのでそれが救いとなる。キレットの手前に白ロープがたれ下がり、梯子がかかっているルンゼがある。ここでザイルをフィックス。その後、約10mの垂直がある、これがキレット。夏場なら右側の梯子を行くが今は雪で使えない。田中君が空身で登りザイルを張る。他の者はプルージックで登る。ピンは2本あるが、上部のピンは不安定である。登攀そのものである。登りきると小屋まではもうすぐ。我々が小屋へ着いたのは遅かったので、小屋周辺には幕は張れず、その上の小ピークのジャリが丁度よい幕場だったので、今夜の寝床とする。今回のハイライトも無事終り、少しホッとする。明日は遠見隊と合流できればいいなと思いシュラフにもぐり込んだ。夕日の剣岳がとても美しかった。
 5月3日、晴のち雨。相変らずの強風の中、テントを畳む。ふと下を見ると、たぶん昨日は雪の中でかくれていたのだろう。誰かの栄養の無くなった残りの物質(三省堂・国語辞典)がテントのスミにくっついていた。グェ~~と思わず叫んでしまう。朝からなんだか臭うと思っていた。しかし、それは田中君が空キジを射ったと信じていた。田中君も臭ったが私が空キジを・・・・と思ったらしい。雪で落すがたいして効果なし。乾けば少しはマシとそのまま畳んでしまう。アイゼンをはく時、自分の靴にもついているのをみつけてしまった、ショック!。今日もずっと黒部側の岩場を歩く。たまに切れていたりするので慎重に行く。これまで定刻にシーバーのスイッチを入れるがどことも交信は出来なかった。今日こそはとP5の雪壁を登り切ったピークでシーバーを操作する。B・Cの金子氏の声が聞こえた。続いて遠見隊の安田氏の声、なんだかすごく嬉しかった。それから岩のピークを越え、五竜の登りとなる。見た程の急さはなく、道も思ったほどゴツクない。しかし、落ちたらヤバイ、1時間程の岩場の後、キックステップで稜線へでる。やがて山頂。昨日、今日と歩いてきた道が良く見える。今日の幕場もよくみえる。五竜の下りは急な斜面を慎重にステップを踏んで行く。あとはトラバース気味にキャンプ地まで。この夜は小林のモミジさんと遠見尾根の安田隊と合流し、いつもより賑やかな夜だった。我々のテントもはじめはウンチ臭かったが、やがて汗と夕飯の臭いとでまぎれてしまった。
 5月4日、雨・強風。昨夜からの雨と強風は朝になっても変らず、ガスも濃い。どこの幕場のブロックも崩れ落ちる程だ。安田隊・もみぢさんは五竜へ出発。我々も出発時間は遅れたが唐松のB.Cへ向う。多少弱まったとはいえ、相変らずの雨と風。その雨もミゾレまじりだったりする。白岳を経てゆるやかな道を行く。しかし、黒岳の手前では雪面が割れていたり、雷が鳴って、あわててザック等をそこに避難したりでヤレヤレ。2511mのピークでは雨はあがったもの唐松まで岩場が続く。けっこう切れていたりで険しかった。特に直下の岩場はイヤラシイ。唐松山荘にはB.C隊の5人が迎えにきてくれていた。ホッとする。B.Cまで30分程で着いて再びホッとする。B.Cからは白馬岳から不帰までが一望出来る眺めの良さだった。さて、一杯飲んでゆっくりしていると安田隊の到着となったが、同時に雨と風がB.Cの丸山を襲った。雨具を着て幕張りを手伝う。この晩は濡れた衣類を乾かすのに専念し、夜はふけた。
 5月5日、晴。風があって寒かったが、この日の朝食は昨夜、オジサン達にあげてしまったので、私達のテントは朝食抜きで下山した。久しぶりに参加した合宿。普段の山行とはまた別の良さを感じた。

〈コースタイム〉
5月1日 大谷原(6:50) → 西沢出合(8:00~8:15) → 高千穂平(11:15~11:50) → 冷池手前トラバース(13:45~13:55) → 冷池着(15:00)
5月2日 冷池発(10:15) → 布引岳(11:25) → 鹿島槍南峰(12:20) → キレット(15:30) → キレット小屋(18:15)
5月3日 キレット小屋発(8:25) → P5(12:15~12:30) → 五竜岳登り手前(13:00~13:15) → 五竜岳(14:05~14:15) → 山荘着(15:00)
5月4日 山荘発(8:15) → 唐松山荘(12:00) → B.C着(13:20)

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