トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ267号目次

小川谷の廊下
荒川 洋児

山行日 1988年7月31日
メンバー (L)荒川、別当、今井、市川、別所、他4名

 最初の参加者募集では一人しか行く人がいない。今度こそ大勢で行きたいと思っていたのに・・・ふん、どうせ私がリーダーですよとイジケてしまったが、しかし天は我を見捨てなかった。やがて一人増え二人増え、最後は9人の大所帯になったのであった。
 30日(土曜日)の夜、集合場所の新松田駅に30分ほど遅れて着くと、駅前には誰もいない。一瞬おととしの悪夢がよみがえってサーッと血の気が引いた。困りますよ、柱の陰に隠れてたりしちゃ。この夜はあなやま橋まで車で入って、シシャモさぞなかなか豪華なつまみで酒を飲み、いいかげん夜中を過ぎたころになってやっと寝る。
 翌朝はふだんのおこないがよいせいか、心配していた天気はしっかりと晴れ。金曜日まで雨が続き、雨の小川谷なんてとんでもねーと心配していたのだが、ぜいたくを言うなら、もう少し暑くなってくれるとよかったのにね。前回は水が濁っていてあまり気持ちがよくなかったが、今回はきれいに澄んでいて、確かに小川谷はきれいなところだと確認。水量は前回とさほど変わらないようだ。
 沢は初めてという人達もいるし、時間もある、特に難しいところもないのでのんびりと登って行く。特に泳いだりしなくても十分登れる沢だけど、小川谷に来て泳がないのは面白くない。「行け!泳ぐんだ!」なんて言って他人をたきつけておいて、そのくせ自分では泳ぎが苦手だからしっかりと捲いてしまう。天気はいいけど、ずぶぬれで日の差さない廊下の中にいると、がたがた震えだしてくるのである。念のためにザイルを持っていったが、濡れて重くなるのが厭でなかなか出さずに、大量のシュリンゲだけで登ってしまい、とうとう最後までザイルは使わなかった。
 もうすぐ遡行も終るというところで、へつりを嫌って捲いていたうちの一人が、その最中の立ち話に気を取られたのか足を滑らせて3~4メートルほど滑り落ちてドボン。あーー落ちて行く落ちて行く、ズズズズ、ドボン、といった感じで見ていたこっちはぞっとしたが、幸いたいした怪我は無し。
 最後の滝では別当さんが張り切って、釜を泳いでとりつく。こっちは水に入るのが厭で、ガンバレガンバレと声援しながら、さてどうなることかと見守っている。だが少し登ったところでドボン。あきらめて戻ってくるかと思ったら、またもや取り付きそしてドボン。数回繰り返した末にとうとうあきらめてまた泳いで戻ってきたが、その根性に拍手拍手。
 この沢は、一昨年、おいてきぼりをくって一人寂しく登ったのだけれど、今回はわいわいと楽しい思いができました。やっぱり小川谷は大勢で楽しくのぼらなくては。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ267号目次