トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ267号目次

白馬岳
石田 淑子

山行日 1988年8月7日~9日
メンバー (L)大久保、安田、升田、石田、他1名

 白馬尻より大雪渓を見上げると、それはバベルの塔のようで、頂は見えない。何と言っても私はビギナー。少し不安。登り切れるかなと思う。リーダーの大久保さんが「スプーンカットになっているから、その中に足を入れるように」と指示してくれる。霧で山が途切れている所まで、一列に人が登っているのが見える。私達三人も後に続く。何しろすぐ前が誰かのザックなので、鼻がつかえてしまいそうだ。大渋滞。誰かが休むと後列の全てが休む。私にとっては都合がよい。けっこう楽しんで登れるものだ。水場で思う存分水を飲む。そして写真、コーヒー等々遊びながら歩く。テント場まであと30分。そこで安田さんと升田さんが待っていてくれる筈だ。14時村営宿舎の前に来ると気がゆるんで座り込み、しばらく動けない。安さんと直ちゃんが見つからない。テントも同様見つからない。仕方ないので、ビールなど飲んでブレイクし、また大久保さんが捜索に出かける。「あったよ」、さあテントで休める。なんていっていると「大久保さん、石田さん、虎さん(堀場氏)」と言う直ちゃんの声。彼女はマッカに焼けて、安さんはカックロに輝いている。荷物を置いて頂上へ行く。雲に私達の影が映る。私達は私達にヒラヒラと手を振る。楽しい夕食。そしてワイン。目刺しを焼いたりしてはしゃぐ。
 翌朝6時15分出発。裏旭岳、清水岳、不帰岳を縦走して祖母谷へ下るコースだ。美しく晴れ上がった尾根を歩いていると、ミクロ的に可愛らしい高山の花花。マクロ的には歩くごとに見えてくる山々。唐松岳、杓子岳、鑓ヶ岳。歩かなければ見ることの出来ない感激的な自然の接近。キョロキョロと風景を見廻しながら歩いていたら、木の根につまづき、左膝をつき、丁度その下に石があったらしく、ジャージは破れないのに、私の膝下の皮が、ビラリとぶら下がってしまった。手当てをしてもらって、幸い出血もあまりなく、痛みも少ない大丈夫だ。みんなゴメンネ。不帰避難小屋の前で昼食。虎さんがラーメンを作って食べている。皆うらやましく二口ぐらいづつ食べさせてもらう。大久保氏は「行動食は火を使わない物でなければいけない」などと言いながら、やはりもらうと食べている。12時に出発。標高が低くなるにつれて暑くなる。藪、藪、藪、鎖場、遠雷、雨が来る。藪、藪、藪、綱場、泥だらけの手、雨が激しくなる。合羽は暑くて着ていられない。谷の音が聞えてきてもなかなか着かない。足はヨレヨレ、なんと6時間藪の中であった。林道に出た時はまるで雑巾のように5人ともズブ濡れだった。あーあよく歩いた。さあ、温泉に入ってから乾杯だ。
 私の怪我のためにリーダーの親切な配慮で、その夜は小屋泊り、雨上がりの星空の下で、充分飲みかつ食べ、翌朝、欅平からトロッコ電車で黒部川の眺望を楽しんで宇奈月ヘ出て、帰途についた。


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ267号目次