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錫ヶ岳(GOGO山行)
小林 勝夫

山行日 1988年6月11日~12日
メンバー (L)勝部、冨岡、小林(勝)

 三峰山岳会に入会後、初の山行である。11日早朝、東武日光前から仕事熱心な運転手の誘いに負け、タクシーで日光湯元に向かう。途中、深く霧に包まれていたが、運転手は、中禅寺湖まで行けば霧は晴れると話していた。
 湯元から前白根へ向かう。スキー場のリフト終点を過ぎると急登になってきた。登山らしい登山をしたのが一昨年の夏以来であるためか、いやに心臓が高鳴り気になる。リーダーの勝部氏、冨岡女史も昨夜の駅待合室での宴会が響いたのか、調子がでないようである。
 前白根から白根山へ向かう道の途中、錫ヶ岳へ延びる稜線へ入る。2394mのピークまでは、踏跡がしっかりしていて左右の見晴らしも良く、植物相は違え、北アの稜線を歩いているようであった。ヤブ山と聞いてきたがこの先もこの尾根づたいに行くのだから楽勝かなと、内心思う。
 ところが、2394mのピークから、いやらしい下りのガレ場を過ぎ、2296mのピークへの登りの頃から樹木に視界を遮られ、熊笹、背の低い栂に阻まれ、速度が急に鈍ってきた。2296mの地点から、方向を西から南西に変えるが見晴しがきかず、尾根も広く方向感覚がなくなってきた。リーダーの勝部氏の後をただついて行くだけだった。勝部氏のルートファインディングにさすがと感心する。
 2170mの錫ヶ岳への最後の登りになる鞍部に着くと、栃木高校山岳部のつけた水場へ行く標識があった。ここより、最後のヤブ漕ぎをして錫ヶ岳の山頂に着く。山頂は狭く、木々で視界もきかず苦労した割りにはむくわれない感じであった。頂上にテントを張る。今日は、昨日飲みすぎたせいかさすがに酒を飲む気がしなかった。
 翌日(6月12日)、4時起床し、5時に出発する。錫ヶ岳より真南に進む。約2時間弱で2077mのピークに着く。ここからの展望は今回の山行で一番であった。シャクナゲのお花畑で、咲き始めのピンクの色が霞がかかって幻想的であった。ヤブを漕いで登った甲斐があったとつくづく思う。無名峰にしておくのがもったいない。シャクナゲ岳か、極楽浄土岳にしたらと思う。
 ここより、1991mの地点までは、比較的踏み跡もしっかりしていて快調に進むが、そこより方向を左、東の尾根を下らなければならないのに、踏み跡に誘われそのまま南西の尾根に進んでしまった。しばらくして、方向がおかしいのに気づき、途中まで戻り、東に修正するが、またおかしいのに気づき、1991mの地点まで戻り、正常なルートを捜す。その間、1時間位いロスする。
 宿堂坊山との最後の鞍部より、完全なヤブ漕ぎの登りになる。胸たけほどある熊笹をかき分け宿堂坊山に着く。錫ヶ岳より5時間半かかる。この山も錫ヶ岳同様視界がきかなかった。
 宿堂坊山より、西ノ湖に延びる尾根を下る。南東よりに下ったので、途中二度ほど東に進路を修正したが、西ノ湖の南端よりに下ってしまった。そこより、平坦な杉の樹林帯をしばらく歩くと西ノ湖の北端の湖岸に着く。ここから一般道を、中禅寺湖畔の千手ヶ浜、そして湖岸沿いに菖蒲ヶ浜のバス停まで歩く。錫ヶ岳より約10時間半かかった。
 今回の山行に参加して、改めて、地図と磁石の重要性について考えさせられた。リーダーの勝部氏がいなければ、今日中にとても下山できなかった。

〈コースタイム〉
6月11日 日光湯元発(7:50) → 前白根(10:50) → 2394mピーク(11:35) → 錫ヶ岳(15:40)
6月12日 錫ヶ岳発(5:00) → 2077mピーク(6:55) → 1991mピーク(9:25) → 宿堂坊山(10:35) → 西ノ湖(13:25) → 千手ヶ浜(14:20) → 菖蒲ヶ浜バス停(15:45)

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