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お天気の話(雪雲)

 昔、雪国の人がはるばる太平洋側に来て、一番びっくりし、うらやましがったのは、青々と広がる空だったという。この極端で対照的な天気分布が、日本の冬の特徴である。このコントラストが、最も鮮やかになるのが、これから春にかけて雪雲を発生させる。水温の暖かい日本海を背にした、日本の宿命なのだ。このような対照的な現象は、なにも日本だけに限られたものではない。地中海に浮ぶ小さな島、シチリア島でも見ることができる。それは、暖かいシチリア海(地中海の一部)で発生した雪雲が、エトナ山系(標高3390m)にぶつかって、山の北側(パレルモ側)に雪やみぞれを降らせているのに、峠を境にした山系の南側の地域では、日本と同じように青空が広がっている。
 日本の場合でもシチリア島の場合でも、冬の冷たい北西寄りの風が吹き渡ると、こうしたことが現れる。日本の場合は、シベリア大陸から吹きつけてくる北西の風が強く、又、寒さも厳しいのに対して、シチリア島の場合は弱く、時間的にも短いため、日本海側のような大雪となることはあまりない。
 ところで、日本海側の各地に雪が降るときといえば、ご存じのように気圧配置が西高東低(大陸方面に高気圧があって、太平洋側では気圧が低くなっている)の冬型になったときである。といっても、冬型が現われても、雪の降り方が弱いときもあれば、大雪になることもある。
 気象衛星「ひまわり」からの冬の雪の画像を見ると、シベリア大陸の海岸線近くで発生した雲が、筋状になって日本海いっぱいに広がっている。この筋状の雲は、シベリア大陸から吹き出してきた冷たくて乾燥しきった空気が、日本海の暖かい海水に暖められ、水蒸気を補給されて発生した積雲(わた雲)が線状に並んだもので、一般には雪雲といわれている。冬型の気圧配置になると、必ず現れる。
 一見、同じように見える筋状の雲でも、その見方によって、大陸から吹き出している北西の季節風の強弱や、寒さの程度を知ることができる。また、降り出した雪が大雪になるかならないか、雪が間もなくやむか、まだ続くかなど、多くのことを知る事ができる。それは次回で。


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