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昭和64年度正月合宿
その1 総括報告
C.L. 服部寛之

山行日 1988年12月29日~1989年1月3日

 毎年恒例の正月合宿を今年度は八ヶ岳・赤岳鉱泉定着で行なった。交通の便の良さと短いアプローチ、それに少ない積雪量のお陰で比較的容易かつ手軽に冬山が楽しめるとあって、期間中日程の忙しいメンバーの出入りが激しかったが、結局合計23名が入山し、賑やかな正月合宿となった。行ったルート・日程等は下記のとおりであるが、天候にも恵まれ、気持ち良い青空の下で快適な登山、登攀を満喫した。元日は生憎吹雪いたため初日の出は拝めなかったが、大パーティを組んで吹雪の赤岳に登り、冬山の厳しさの片鱗にも触れることができた。この合宿で初めてアイゼンを履いたような新人諸君にも冬山の険しい表情をひととき垣間見ていただいた訳だが、この経験をステップとして益々山を好きになって楽しんでもらいたいと思う。
 ここで、今回の反省すべき点として二つばかり記しておきたい。ひとつは装備の搬入についてであるが、初日29日に入山したパーティには、私の配慮の至らぬ計画により相当な重労働を課してしまい、この紙面をお借りしてお詫び申し上げる。しかし反面、赤岳鉱泉程度のアプローチならば、イイ男達さえ揃うならば、5~6人パーティでもかなりのものを揚げられることが分かったことは大きな収穫であり、今後の計画立案の際の良い参考となった。(「野郎ばかりでなく女の子が一人でもいればもっと力が出た]という指摘もあったが、もっともだと思うが、世の中なかなかうまく行かないものだ。)ちなみに搬出については、ゴミを含め不要となった装備を順次下山するメンバーに持って下りてもらったため、最終日までにスムーズに片付けることができた。
 もうひとつはトイレの件である。一部のメンバーに幕場周辺の雪中で『大』を済ませていた者がいたが、稜線上や森林中の『雪隠(セッチン)』ならば兎も角、赤岳鉱泉のような小屋周辺のテント指定地でのあのような行為はいただけない。トイレが設けてあるのは羞恥心の為だけではないのであるから、面倒臭がらずにトイレを使用すべきである。雪が融けたらどういう様相を呈するのか、そこに出会した人間がどういう思いをするのか、敢えて指摘するまでもなかろう。利己主義の蔓延る世相や自然破壊を嘆くのは簡単だが、その物差しを自分自信に当てるのは難しい。
 今回私は思いがけずチーフリーダーの大任を果たさせていただいたが、指名された時は山歴の浅い自分にはC.L.は不適格だとしてお断りしようかとも思ったが、経験あるメンバーのサポートが得られるならば何とかできるだろうと考え、また積雪期の八ヶ岳には何度か登っていたこともあったので、敢えてお引き受けした。お陰で随分勉強させていただきました。頼りがいのない私をサポートしてくれたサブリーダーの勝部氏と今井し、登攀リーダーの金子氏、時に応じ適切な助言を与えてくださった川田会長、合宿成功の鍵の半分を握る食料計画及び食当総指揮の大役を引き受け甲斐がいしく動いてくれた大久保氏と補佐の牧野さん、記録の阿部さんには大変お骨折りいただいた。御礼申し上げる。その他、私の勝手な言いつけに文句も言わず(しっかり言った者もいたが)従ってくれた各メンバーの方々にも感謝申し上げたい。また中村氏には緊急連絡先として東京で待機していただいた。どうもありがとうございました。事故の知らせで正月酔いを醒ますことなく終えることができ、何よりでした。また美濃戸山荘にいらした福澤氏には入下山時に大歓待していただき、メンバー一同感謝しております。皆さんのお陰で一人の事故者も出すことなく、奇しくも昭和期最後となった正月合宿を無事終えることができ、正直言ってホッといたしました。どうもありがとうございました。

ルート及びメンバー
12/29 晴れ 最初のパーティ入山
12/30 晴れ ▲石尊稜・・・ 金子、中沢、今井、別当
▲赤岳~横岳~硫黄岳・・・ 川田、大久保
▲硫黄岳ピストン・・・ 湯谷、井上(博)、大石
○雪訓・・・ 服部、荒川、井上(雅)、阿部
12/31 晴れ ▲硫黄岳(その1)・・・ 服部、勝部、川田、大久保、牧野、市川、大石、井上(雅)、阿部
▲硫黄岳(その2)・・・ 菅原、小林(健)、佐々木、重信、大泉
▲ジョウゴ沢(氷瀑)・・・ 金子、山本、今井、井上(博)、荒川、別当
○雪訓・・・ 服部、川田、荒川、重信、佐々木
1/1 ▲文三郎道~赤岳~地蔵尾根・・・ 服部、今井、荒川、大久保、菅原、井上(博)、小林(健)、大泉、市川、牧野、安部、重信、佐々木、(大豆生田[マミウダ]=山本氏の友人)
【発(8:45) → 休(9:15~25) → 休(10:35~40) → 頂上(11:17) → 頂上小屋(11:30~12:10) → 帰幕(14:20)】
1/2 晴れ ▲中山尾根・・・ 山本、井上(博)、今井
▲阿弥陀岳~中岳~文三郎道 服部、荒川、菅原、大泉、阿部、佐々木、鈴木(章)、牧野、市川
【発(7:30) → 休(8:15~25) → 中岳とのコル(8:45) → 阿弥陀岳頂上(9:15~10:20) → 帰幕(12:55)】
1/3 晴れ 最後まで残っていた者全員下山。帰路温泉片倉館ヘ直行。

費用 幕場代除く、食料、燃料、ローソクその他の経費は合計52,300円で、一人当たり2,600円でした。幕場代は一人一泊400円でした。(会計 大久保)

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