トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ270号目次

大久保山
藤居 陽子

山行日 1989年2月19日
メンバー (L)今村、堀田、日野、藤居

 「デノ小屋山」などと変わった名前も持っている面白そうな山ヘ登ることになった。
 新宿を離れるにつれ、天気の回復が遅く気がかりだったが登り始めて間もない切目峠でついに雨具を着けた。馬頭観音の前を左折し山道に入る。やがて尾根へと上がり木の間越し右下に間明野(まみょうの)の部落を見ながらなだらかな登りが続く。途中、地図の見方や方向の定め方などの細かい説明があり、いつも指導標に頼ってばかりの私にはとても有り難いことだ。
 最初の古橋で滑って足を打ったからか、歩く速度や休憩のとりかたに気を配られ後ろばかり振り向く今村さんに済まない気分で歩いていた。
 だんだんと高さが増して来ると天気の悪いことが幸いして、周囲の余分な景色が消され灰色の空間に見事なガラス細工の濃褐色の林が浮かび上がってきた。小雨に混じって樹氷のかけらが落ちて、しゃら・しゃらと伴奏をつける。きらきらと白く輝きながら、光のじゅうたんを敷いてくれる。その上を惜しみもなく歩いた。あえぎあえぎ登るつらさも雨具のうっとうしさもこの素晴らしい風景の前に吹き飛んでしまう。
 頂上でツエルトを張り、汗のでる温かさの中でコーンスープとアップルパイでお腹を満たす。
 時間がないので岡松ノ峰へ行く予定をやめて、記念撮影の後下山ということになった。往路を5分程戻り大久保山の肩のあたりから右へ林の中に入る。急な斜面は芽吹き前の勢いよく伸びたのいばらやタラの木、つる草などがはびこりどうしようもなく歩きにくい。だが、久振りの大好きなヤブくぐりで、嬉しくて仕方がない。方向もなにもかも頭の中から消えてしまい夢中で灌木の枝をつかみ、踏みつけて下った。一つ尾根を間違えて、少し登り返してからやっと滝子山方面への分岐へ出た。川原で紅茶を沸かして休憩をとる。
 歩き足らず少し物足りない思いもあったがこのヤブコギで気分は爽快であった。
 恵能野川を幾度か渡り返しながら林道を朝の出発点へ戻る。恵能野(えのうの)の部落を東に回り、立ち寄った真木鉱泉は料亭風に変身していて、酔った客で賑わっておりがっかりした。素晴らしかった山行のしめくくりには相応しくないので、期待していた一風呂・・・・・・はあきらめ大月に戻った。一人千円で入浴が出来るそうです。

〈コースタイム〉
大月(9:30)(タクシー)恵能野(9:45~50) → 切目峠(10:10) → 大久保山の肩(11:55~12:00) → 大久保山(12:10~13:15) → 肩(13:25) → 恵能野川(14:05~14:35) → 恵能野(15:15) → 真木鉱泉(16:00) → バス停真木郵便局前(16:15~16:30)(タクシー)大月(16:45)

タクシー 大月→恵能野(中型) 2,060円
真木→大月(小型迎車料含) 1,460円

トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ270号目次