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涸沢定着
その2 前穂高岳北尾根ルート[前編]
飯塚 陽子

 8月13日(日) 午前3時起床
 外はまだ暗いが、天気はよさそうである。いよいよ今日が来てしまったという感じである。
 昨日、後発隊として無事入出し、そしてそこで対面した穂高の山々の威厳に満ちあふれた姿に、圧倒されっぱなしであった。昨日のルート説明では、登山道はあるとの事だが、その山は、ギザギザの尖った峰ばかりで、決して道があるようには見えず、「登れるもんなら登ってみな!」といわんばかりに、そびえ立っているのである。そこに、これから登っていくのである。
 起床後、まず朝食の準備。斎藤さんの体調が、ちょっとよくないようである。昨日の荷上げでは、だいぶ頑張っていただいてしまって(他の皆さんにも)大変申し訳ない気持ちになる。それでも登ろうとしている気迫には、頭が下がります。
 5時10分。準備を整え幕場を後にする。涸沢の長~い雪渓を登りつめ、ゴロクのコルヘ到着した。そこでハーネスと、お貸りしたヘルメットを着け、朝日に輝やく岩だらけの山に向かったのであった。
 五峰からいきなり急登である。やっぱりというか、予想以上にその登りは、岩登りの世界であった。登っていく人々が皆、鉄人のように見えてくる。しかし、ここは足場もしっかりしているし、浮石もないのでザイルは使用せずに登る。五峰のピークでホッと一息。ちょっと、岩に馴染めたかな?!という感じだが、先はまだまだ長い。太陽もジリジリと照りつけてくる。
 そして、いよいよ四峰である。ここからは浮石も多く、だからもちろん落石もあり、危険地帯である。そして、ここで危険地帯の恐ろしさをかみしめることになる。
 先を行くパーティーの落とした石が、別当さんの首のあたりを直撃したのである。幸いザイルを首に巻いていたので、ケガはなかった様であるが、もし巻いてなかったら、大変な事になっていたはずである。「石は絶対落とさない様に登る」というリーダーの言葉が、身に染みました。
 この四峰からは、ザイルを使用し、ほとんど引っ張り上げてもらうような形で、ザイルに頼りっぱなしで登っていった。とにかく浮石が多く、慎重に登ったつもりでも、かなり落としてしまったと思う。
 四峰のピークから、真正面に更に大きくそびえ立つ三峰が立ちはだかり、その取り付き点には、数パーティーが順番待ちをしているのが見えた。とにかくすごい岩山だと思った。
 これから、最も傾斜のきつい三峰の登りが始まるのである・・・・・・。ここからは、斎藤のひろ子さんにお願いしたいと思います。
 今回の山行を終えて思うことは・・・・・・
 ずーっと憧れていた穂高の山に登れて感激したこと、そして、このような山は決して自分一人の力では登れなかったということ。自分ではよく登ったなーなんて思ってしまったけど、私が登れたのは、ザイルがあったからだし、ザイルを張ってくれた人達がいたからである。このことを忘れず、私ももっと頑張っていこうと思いました。

〈コース〉
涸沢~北尾根五、四、三、二峰~前穂高岳~吊尾根~奥穂高岳~涸沢


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