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フジサン Mt.FUJI Oh!フジヤマ
斎藤 ひろこ

 やっぱり、とうとう行くことになってしまった。とりあえず昨日、雪訓をやったけれどあしたも念には念を入れて雪訓パートIIかななあんて考えていたのに。"富士山"と言えば、それはそれは日本一の山だから一生に一度は行かなくっちゃと思ってはいたけれど、まさかこんなに早く、しかも夏ではないのに行けるとは。フイを突かれたというか、うれしいような、複雑な気持ちで眠りについた。
 翌朝12月10日、3時過ぎ起床。外は満天の星、そして明るい月あかり。思いのほか寒くはない様子。5時20分頃、懐電をつけて幅広い登山道を歩きはじめる。しばらくして出発前から不調だった井上さんが引き返す。森林限界を過ぎても雪はまだついていない。七合目付近で一本とると、遠くに見える雲の線から赤い太陽がグングンと顔を出してきた。おはよーっ。今日も絶好の富士山日和だよっと言わんばかり。太陽がとても暖かい。明るい陽射しに足元の雪はいよいよ白く、アイゼンの爪がしっかりと食い込んで、春の剱の時のそれとは違う感触が伝わってくる。高度が上るにつれ、四方八方から吹きつける風はさらに強くなり、昨日の耐風姿勢を幾度とな くとってしまう。
 それにしても富士の登りは単調なのだ。ほぼ一合目おきかそれに満たないかの間隔で小屋のような風よけのようなものが出てきて、まあ、どこまで来たかの目安になるけれどひたすら同じような登りで景色は一向に変わらない。変わったものと言えば、太陽が高くなったことぐらいかなあ。時間は経っているのに進んだようで進んでいない気にさせられてしまう。青空と白い雪の境界線が見えるのに遠い。ゼーハーしながら、最後のもうひと頑張りよンという鳥居のある九合目を越えて山頂へ到達っ! ヤッターッ! が、しかしなぜか他の山でいうピークという感じがしない。何かが足りない。そう、考えてみれば富士山にはお釜があって、そのまわりをお鉢めぐりと称して歩くことができるんだから、360度の展望はあり得ないわけで。だからして山梨側から太平洋は見えないわけで。お釜を覗くと、そのおどろおどろしさに数年前相当騒がれた"富士爆発"というのを思い出し、思わずここで爆発しないでーと祈りつつ富士をナデナデしてしまう。
 山頂では小屋の陰にかくれても強風にあおられる。それにもめげずひと休みしていたのだけれど、ふと横を見ると・・・ むむっ。何とマグマ生まれの火山岩だよーんとうまく化けたように、平然として傍らに○○軍がいるではないか。するとココハ・・・。
 それと強風に追いたてられるように下山。出だしはコンティニュアスで慎重に下りた。
 銭湯で見る富士山。通勤電車から見る富士山。やっぱり見るのが良い山なんだろうかと思う。けど今度は剣ガ峰まで行き、尚かつ、太平洋をドーンと見てみたい。


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