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平成二年度春山合宿・槍ヶ岳
その2 東鎌尾根隊(前編)
牧野 美恵子
山行日 1990年5月3日~6日
メンバー (L)山本(信)、大久保、佐藤(明)、飯塚、服部、安日、荒川、阿部、今井、飯島、渡辺(昇)、牧野、斎藤

 5月3日
 2時間の林道歩きの後、やっと中房温泉午前7時着。もう汗だくになっている。誰かがここで温泉に入って帰ろうか等と冗談を言っていたが、私はそれもいいなとマジで思っていた。このコースに参加希望した当初より抱いていた体力的な不安がまた頭をもたげてきていた。パーティーの大部分の方より二まわり程小さい私のザック。1泊2日の縦走のつもりかい等と誰かに冷かされたっけ。自己の体力の無いのをカバーしようと、シュラフはもちろん、コッヘル、マット、行動食やつまみの量に至るまでひとつひとつ料理用の秤にかけて個人装備を可能な限り軽量化した結果なのですが。軽量化により生ずる不便さには自分だけが我慢すれば済むだろうと思っていたのですが、皆様と同程度の容量のザックを背負わないとこういう合宿参加の資格は無いのでしょうか。とても気になっています。
 さて中房温泉での大休止の後、いよいよ出発。いきなり急登で先ほどつけた日焼け止めも汗と一緒に流れ去ってしまった。樹林帯の中をさらに登ると合戦小屋への荷上げリフトの鉄塔が見えてきて、第二ベンチのある広場に着いた。中房温泉でもそうだったように、ここでも先着の数パーティが休んでいた。私達が一本取っている間にも何パーティか登って行き、何パーティかが降りてきたりして、さすがにアルプス銀座だなと感心してしまった。
 縦走路は合戦小屋手前まで樹林帯を走り、展望は全く無かった。その反動か合戦小屋前に到着し、解放的な展望が得られたときには非常に嬉しかった。また燕山荘も見えたので、あと一投足で今夜の幕場に着くという安堵感も湧いてきた。
 しかし安堵して、それまで抱いていた不安感と緊張感が後退しそれと同時に一睡もできなかった夜行の疲れがどっと出てしまい、燕山荘までの道のりの長かったこと長かったこと。もう参りました。余裕のある面々はさっさと登っていったようですが、私達は休み休み展望を楽しみながらのろのろと登って行った。
 幕場は前に誰かがテントを張った跡を少し手を加えただけでエスパース3張が張れた。敏ちゃんがテントリーダーのCテントがまだ張り終らないうちから、大久保さんがテントリーダーのAテントは酒盛りを始めたようだった。(うらやましい・・・・・・)
 テントでお茶を一杯飲んでからまだ余力のあるものは燕岳に向かって行った。テントに残った者で夕食の飯島風グルメカレーの仕度に取りかかった。その日の夕食は下界でもかなりおいしいと思われるカレーをいただいた。
 翌朝は4時半起床予定が20分遅れてしまった。外は風雨共に強い。
 停滞かどうか天気の様子を3時間程みてから、結局8時40分幕場出発。アイゼンを装着したので足元はいつもより慎重になる。稜線上にはあまり雪は無いように思われた。蛙岩、為右衛門吊岩を通過し、一本も縦走路に立ったままで取った。雨のせいかせっかくの稜線上でも展望がきかない。がっかりだ。大天井頂上まであと一登という地点に12時着。直登30分で大天井岳に着くが、この30分のキツイことキツイこと。一本取ってから大天荘前の幕場に向かう。
 幕場に着いてからさらに風が強まったように思う。Cテントは風の通り道に張ってしまったのか、私以外の4人でテントのまわりに作ったブロックが、翌朝はきれいになくなっていた。


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