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平成二年度春山合宿・槍ヶ岳
その3 東鎌尾根隊(後編)
飯塚 陽子

 「明日は、どうか雨がやみますよーに」という願いも空しく、5月5日はものすごい風と雨で目が覚めた。やっぱり槍へは登れないんだな、というくやしいような思いが込み上げてきたけど、潔く諦めるしかないという様に、外はものすごい嵐である。A・B・C班のどのテントもぐちょんぐちょんで、フライが破れてしまったテントもあり、この日は大天荘に避難することになった。このような時に、すぐに飛び込める山小屋が近くにあって、本当に小屋のありがたさを感じた。
 さて、外はすごい嵐だけど、小屋の中はストーブもあり、テーブルに椅子もあり、そんな中でくつろいでいると、いつのまにか出てきたのがお酒とするめであった。ここで阿部さんの特技の「するめ裂き」をじっくり観察させてもらいましたが、結構難しいものなんですね。その後は、「UNO」や「大貧民」などで盛り上がり、なんだかんだと楽しく時間は経っていったのであった。そしてきわめつけに、A・B・C班合同の夕食は、デザート付の豪華版で、山にきてこんなに贅沢をしていいのだろうか・・・と思いながらも、回ってきた料理には必ず箸をつけてしまう私でした。
 今回の合宿は、天侯に恵まれずに停滞の時間も多かったけど、このように小屋で過ごしたことも、また先輩方に、いろいろな話を聞かせていただいたことも、大変よい経験になりました。
 明けて合宿最終日の6日は皮肉にも快晴・・・。本当に素晴らしい天気で、槍、穂高の大パノラマが目の前に拡がっている。槍の穂先を見つめながら「あと一日休みだったら登れたのに・・・」と、くやしい気持ちは皆一緒だったと思う。そしてこの360度の素晴らしい展望を思い思いに楽しんだ後、「槍」との別れを惜しみつつ、総勢13名の東鎌尾根隊は、予定変更となった一ノ沢へ皆無事に下山した。


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