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乗鞍岳山スキー
今井 敏樹

山行日 1990年4月7日~8日
メンバー (L)菅原、飯島、今井

 日頃の心がけがよくないせいか、昨秋には左膝、今年1月には右手首を故障してしまい、冬山、スキーには不本意を日々が続いていた。動かすことができたので余計に回復を遅らせることになったのかもしれぬ。というわけで、今年のスキーシーズンも終わりに近づいていたこともあり、満足できる滑りをしたいと思っていた。その点において乗鞍は3000メートルの標高、雪質や斜面の良さにおいて山スキーをするのに十分すぎる程の価値を持っている。
 4月7日朝、乗鞍高原スキー場は快晴で、これから向かう剣ヶ峰を中心とする白い峰々がくっきりと望まれる。リフトを3本乗り継ぎ、終点でシールを張って出発する。コースは樹林帯を上がると思っていたら、ゲレンデの林間コースのようにごそっと伐採されていた。このため迷うことはないが、山スキーとしては味けない。1時 間登った後、脇の森の中にテントを張り、軽装で肩の小屋を目指す。天気は次第に悪くなり、森林限界を越えたあたりからは視界も悪くなる。ただ支柱がところどころに立っており、前を向いて歩けば迷うことはない。目の前に肩の小屋が見えてもなかなか到着せず、やっとの思いで小屋の前に到着。真冬を思わせる寒さと吹雪である。本来ならスキーをアイゼンにはきかえての山頂ピストンはあきらめることにする。
 視界がよければ北アルプスや松本平を見ながらの豪快な滑降が楽しめるはずであるが、何しろ目の前が真白けの状態である。ちょっといっては止まり、のくり返し。おまけに感覚がまひして滑っているつもりが実はスキーは止まっていたりして、何とも不思議な気分。足が地に定まらないいわば宇宙遊泳のようだともいえようか。このため、飯島氏はすっかり気分が悪くなり、「車や船に酔った気分」になり、いつもの元気さは全くなくなっていた。私はというと、じきに故障した左膝が痛くなり、右回りターンができなくなり、左回りをしては止まってキックターンの繰り返しで四苦八苦していた。ただ、登山歴20年以上で、スキーの達人の菅原氏だけは、革の登山靴をはきながら、平然と滑り降りていた。
 やっと元の幕営地到着。いつものように少し飲んで床に着く。
 翌日は朝からどしゃぶりの雨である。いやいやながらテントを徹収して滑降の準備である。登ったときより荷は重いが、さすがに下りは速い。あっという間にスキー場のゲレンデの中に出る。ゲレンデ内の窪みはところどころ大きな水たまりになっており、水上スキーも楽しむことが出来た。もっとも水上スキーなんかしなくても全身はすでにズブぬれになっている。駐車場内のトイレにて着替えを済ませ、早々に温泉へと向かい、乗鞍岳を後にする。

コース状況
 本文でも述べたように森林限界まではゲレンデの森間コースの延長のようだ。また最大斜度は19度で急な斜面はない。(肩の小屋より滑降の場合)。またかなりスキーヤーが入るため、新雪直後や軟雪の場合は滑りにくくなる。(ザラメの雪の場合は異なると思う。)あとはポールを見のがさなければ迷う心配はない。


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