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編集後記

 <たばこすい>どもに言いたい。他人に不快な思いをさせるのは止めてくれ。これまでじっとガマンの俺であったが、もう止めた。言ってしまう。嫌な思いをさせられても、和を乱すのがイヤだから、そんなことで雰囲気をこわすのは馬鹿馬鹿しいから、みんな黙っているけど、ムカつく思いをグッと堪えて飲み込んでいる人間はたくさんいるのだ。では具体的にどういうことでムカつくのか。ムカつかせている人間は気分良く吸っているんだろうから周りの人間がどの程度イヤな思いをしているのか解るまいと思うのでいちいち書くが、(解っていて吸っているなら、俺はそういう奴には言うべき言葉を持たない)、最悪なのが、起き抜けのタバコ。目が覚めてすぐ、まだシュラフに半身入ったままなのにもう吸う奴がいる。頭半分ボーとしたまま、まだちゃんとした人間になっていないのに、タバコだけはもうしっかりくわえている。よほどのニコチン中毒なんだろうが、そんなに吸いたきゃ外行って吸ってくれ、と言いたくなる。どうしても中で吸いたきゃ出入口まで這って行って開けて吸ってくれ。ただでさえ狭いテントの中、煙の嫌な人間には逃げ場がないのだ。朝一番にむりやり至近距離で濃密臭煙を吸わせられる人間の身にもなってみろ。
 テントで宴会中のタバコもそうだ。絶対吸ってくれるな、などとは言わない。吸いたければ気持ち良く吸ってもらいましょう位の気持ちはこっちにだってあるのだ。多少他人に迷惑な思いをさせるのであれば、一言断わるのがエチケットってもんじゃないのか。人間は感情の動物、その一言で気分が肯定的にも否定的にもなるのだ。ただし、テントの中で複数の人間が同時にスパスパやるのだけは止めてもらいたい。タバコを吸わない人間にはノドの弱い者が多く、充満した煙でノドがおかしくなるし、目が痛くなることもしばしばある。
 それから歩きながらのタバコ。隊列を組んでいる時など、前の方で始まるとうしろの人間は大いに迷惑だね。タバコの煙というのは3、40m離れて歩いていても臭うもので、空気の美味い山の中ではことさら鼻について気分を害することハナハダしい。歩きながら吸いたきゃ、列の一番うしろでやってくれ。そうは状況が許さないなら、一本立てた時ゆっくり吸ってくれ。
 そういう歩きながらなり、休憩時なり、行動中に吸う<たばこすい>の中には、吸いがらをその場に捨てて行く奴がいるけど、ひどいね。フィルターは分解しないの知ってるんだろうに。アルプスの三千メートルの稜線でも捨ててく奴がいるね。雷鳥なんか、誤ってフィルター喰っちゃうと死んじまうの、判りそうなもんだがね。そういう人間は、マ、人間以外の他の種類の山の住人達に対する思いやりなど持たないのかも知れんね。
 <たばこすい>どもよ、煙を吸い込み過ぎて理性を曇らせたり、良心を煙にまかれたりせぬよう、くれぐれも気を付けてくれい。

(服部)

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