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木曽駒ヶ岳集中山行
その2 福島Bコース "気が付けばAコース?"
大久保 哲

山行日 1990年9月15日~16日
メンバー (L)金子、野田、大久保、斎藤

 9月5日のルームでのこと。ボードに書かれたルート別参加者名、福島Bコースには、金子、大久保、野田、斎藤と記されていた。またもやこの金子、野田の名前を見て、隠された、何か起りそうな、変な期待をしたのは私だけであろうか。そして、またまたその期待を裏切らず、何かが起ったのであった。
 それは木曽駒山荘先の車道終点より始まるのである。木曽福島駅より我々と沢コースのメンバーは、それぞれタタシーに分乗し木曽駒山荘へと向かった。途中の正沢川は連日の雨で茶色に濁り濁流と化していた。この様子では沢は無理だろうな、と思いながら車はスキー場を横切り車道終点に着いた。さっそく出発準備にかかるが、ますます風も強くなり雨もひどくなる。沢パーティーより先に我々は出発するが、沢パーティーは沢の様子を見てだめであれば我々の後を追うとのこと。登山口と書かれた所より少し登るとスキー場のリフト終点に出たが、登山道が判らずしばらく探すが、ある程度踏まれた赤布のついた道があったのでそこを進む。ふと下を見ると沢パーティーも沢を諦め我々の後を追ってくるのが見えた。少し待とうとしたがとりあえず先へ進む。進むにつれ途中より道が切れてしまった。そこから引返せばよかったのではあるが、尾根に出れば道があるだろうとのことで、リーダー金子氏に引かれ、急な斜面を登り出す。登れど登れどなかなか尾根には出ず、金子氏一人がどんどんと道なき急なヤブを進む。しばらくして、上の方より金子氏の声。「やれやれとんだ苦労をされられたな」と思ったが期待を裏切られ、追いつくと登山道ではなく先に続くのは、かすかに道らしきもの。ここまで登れば後には引けず、雨で薄暗いヤブの中で地図を広げるが、このまま進めばAコースの四合目辺りに出るだろうと判断し、このままこの急斜面を進むことにする。途中、Bコースを行く菅原パーティーとの交信では、登山道はしっかりしているとのこと。雨と汗でむれたカッパを着、手を時々トゲにさされながらヤブを進むのを考えると、急に菅原パーティーがうらやましく思えてしかたがない。またしても"何かある山行"に期待し、それに応えてくれた金子氏にかんしゃく、いや、感謝しつつ、ハアハア、ゼイゼイと薄暗く、しょぼ降る雨の中、急登が続く。出発して2時間、ようやくまともな登山道に出る。そこから10分程でAコースの四合目であった。ひと息入れて出発するが、どうやら急登は四合目までで終り、五合目、六合目はさほどの登りはなく、いつもであれば楽に距離をかせげるところではあるが、あまりにも期待に応えてくれた充実の2時間でエネルギーを使いはたしたのか、先行く三人と私の間は広まるばかり。元気な三人には先へ行ってもらうことにし、一人ヨタヨタと足を引きづりながら進む。ふと煙の臭いに気付き前を見上げると樹々の間からつき出た煙突が見え、そこが七合目避難小屋だった。中に入りさっそくストーブにあたらせてもらう。時計を見ると1時半。少し早いが悪天の為、本日はこの小屋までとなった。
 翌朝4時起床、6時出発。天気は薄曇り。30分で水場に着き顔を洗う。そこから丸い巨岩がゴロゴロする山姥の奇岩を通りぬける。この辺りから眼前に玉ノ窪小屋が時々見えだした。時折小雨が降っていたが、玉ノ窪小屋へ着く頃には本格的な雨となった。小屋で雨をさけ、寒さで震えながら雨具をつけていると、中ではストーブに火がつき朝食が始まったばかりで、つい横目で見ながらうらめしく思ったりする。再び駒ヶ岳山頂へ向かい出発する。歩き出して間もなく木曽小屋を通り過ぎ、8時半に山頂へ着くが残念ながら展望はいまひとつ。強風にあおられ十分に展望を楽しむ間もなく下山開始。少し下ると風も少し弱くなり、悪天候でなければ昨日のテント場となった頂上小屋周辺には、テント2張と何となく寒々しく見える。悪天がもたらした、快適な避難小屋生活に感謝すべきであろう。宝剣山荘で、宝剣岳往復組と即下山組とに分れ、若く元気な斎藤さんは宝剣岳へ、残った我々オジサン三人は熱いお酒恋しく、即下山組となり、千畳敷へ下る。乗越浄土までくるとガラッと景色も一変し、地形のせいか風もピタリと止んだ。見下すと千畳敷には、ハイキング姿の人達がぞろぞろと蟻のようにずっと下まで続いている。一気に下山と決めてはいたが、登ってくる人が多く思うようには下れず、途中より人の少ない左側のコースを下り千畳敷池へ出る。そこから見上る千畳敷カールは、紅葉には少し早いがポスターや絵葉書で見るよりもずっとすばらしい景色であった。しばし見とれながら、今回の山行を想い出すのであった。期待した何かがあった山行を。

〈コースタイム〉
15日 木曽駒山荘(9:00) → Aコースに出る(11:00) → 四合目(11:10) → 分岐(11:50) → 六合目(13:00) → 七合目小屋(13:30)
16日 小屋発(6:00) → 水場(6:30) → 玉ノ窪小屋(7:40) → 木曽頂上小屋(8:20) → 木曽駒山頂(8:30) → 宝剣小屋(9:00) → ロープウェイ(9:45)

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