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剣岳定着
その2 剱定着(前編)
飯島 豊

山行日 1990年8月11日~18日
メンバー (L)山本(信)、荒川、今井、斉藤、飯塚、飯島

 両端の切れ落ちたナイフエッジはクライマー見習い中の私にとってはとても気持の良い所であった。盆休みを利用し、サイフとも相談し、ゲンさんに誘われ行ってきた剱岳は、雨にいじわるされたものの充実した山行であった。

 8月11日
 夜行とバスを乗り継いで黒四ダムに着く。サンダルを登山靴に変え出発する。天候は曇り、時刻は7時頃。黒四ダム下に下り、黒部川に沿って進む。丸山、内蔵助平を過ぎハシゴ谷乗越まで、皆重荷にあえぎながら行く。乗越から真砂沢もまた長く、幕場に着いたのは夕方6時頃であったと思う。食事をしてしばらくすると雷を伴なった雨が降り出し、全く止む気配がない。場所が悪かったせいで私たちのテントは陸地より75cm程離れてしまいこのままでは水没するのも時間の問題となり、リーダーゲンさんの判断のもと総員6名、一致団結し我らがテントを移動させ窮地を脱したのであった。この時かかった時間は3分27秒であった。
 しばらくすると雨も止み、皆安らかに眠りについたのであった。

 8月12日
 一日が始まる。例によって私はメシをたくさん食べ、皆と一緒に出発する。今日は三ノ窓までの急な雪渓登りである。雪渓に着くまで靴を脱いでの川渡り、足がしびれる。雪渓は長く、我々ほとんどが軽登山靴、軽アイゼンであったのでなかなかきびしい。途中水10リットルの補給を行なう。(斎藤さんがひとりで背負う。)三ノ窓に近づくにつれあたりは幻想的なモノクロ写真のようなシーンとなる。光と霧と岩峰である。三ノ窓には4時頃着いたと思う。
 東京の暑さを忘れ皆で一服する。各自満足しているようであった。

 8月13日
 朝早く起き剱岳チンネ左稜線に取り付く。6名は2パーティーに分れる。ゲンさん、斎藤さん、私と荒川さん、今井さん、飯塚さんの2組である。ゲンさんがトップで皆を引っぱる。III級の易しい所でゲンさんが私にトップをやらせてくれる。これがなかなかむずかしい。どこで切ってよいのかよくわからない。少しでも距離をかせごうとすれば良いビレイポイントが得られなかったり、かえって時間をロスする。そしてT5までたどり着き、再びトップをゲンさんと交替する。ややかぶり気味のフェースでアブミを使って越える。再びトップを代わりチンネの頭に出て終了する。午後3時頃であった。次の荒川パーティーが終了する間際に大粒の雨が降り出し、3人は雨に打たれながらの終了であった。
 6人そろっての雨の中の下山。この日は真砂沢まで下りず三ノ窓で過ごす。食料がなかったが各自の行動食を出し合い、お茶やら、ラーメンスープやら飲んで早々に眠る。

 8月14日
 朝食は帝国ホテルに出前を誰がたのんだのか、ゲンさんの顔の広さか、オレンジ、ケーキ、コーヒー、タロワッサン、パン等々豪華メニューでおなかもハートも一杯になる。
 下山は一ヶ所、昨夜の雨で極端に細くなった雪渓の橋渡りでザイルを使ったが、他は問題なく無事ベースに帰還する。

 8月15日
 残念ではあったが、ゲンさん、荒川氏、飯塚さんを残し、今井さん、斎藤さんと共にベースを出る。朝6時半頃であった。途中の休みは2、3回しかとらず黒四ダムに着いたのは12時頃であった。
 大町の温泉につかり、例によってビールと飯を食い、列車に乗り込んだのであった。


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