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平成四年正月合宿 爺ヶ岳集中
その2 東尾根隊
奥田 純子

山行日 1991年12月30日~1992年1月1日
メンバー (L)飯島、山本(信)、荒川、別当、吉江、奥田

 最初はハプニングで始まった。出発の集合時間が早まったのを知らないメンバーがいるというのだ。当然駅には来ていない。しかし、連絡はつかない。無情にも列車は動き出す。列車内の電話から先発していることを知らせたが、トンネルに入って電話は切れてしまったと言う。こんなことで合流できるのかと心配したけれど、さすがツーカーの仲? 翌朝全員集合となる。
 ワゴンタクシーで取り付きまで行く。明るくなるのを待って出発。急登が続くが樹林帯にはずっとトレースが伸びている。いくらも行かないうちに天幕が現れる。前日の雪で足止めをくったのだろう。どうやらこの日は2日分のパーティが動くようだった。はたして、1時間も行かないうちに、トレースの先頭に追いつき、ラッセルの列は見る間に20人を越す長蛇の列となる。こんな調子で偵察の時の最高到達地点を越え、稜線をたらたら登っていくと、アッという間に幕営予定地に着いてしまった。まだ9時過ぎ。まだもうちょっとと登って行って、 1970m地点に着いたけど、まだ午前中。この後幕営適地がもうないため、そこは天幕の花盛りだった。ラッセルを心配してわかんじきまで持ってきたのに、トレースがしっかりしているためにこんなに早く着くなんて、とあきれながら整地して、ぞろぞろ人の歩いていく中で、天幕を張った。
 この日の最大の話題は交信についてである。約束の時間にオープンしていくら呼んでも誰も応えない。その理由を推理しながら、重荷の元凶だった有り余るお酒をぜいたくに飲み、夜は更けて行った。
 明けて大晦日、晴天。いくつか天幕が片づいてトレースができてきた頃、おもむろに出発である。起き抜けに頂上直下の急登はつらい。休み休み登っていく。心配していた悪場はない。もうちょっとで頂上というところで、上からのんびりとこちらを眺めている人影が目にはいる。こっちはこんなに苦しいのに涼しい顔して見ているわね、と、にらみつけたらどうも見たことある顔。なんといくら交信しても行方不明だった南尾根パーテイーだった。
 主稜線歩きの寒風の迫力に当初の予定はすっかり飛ばされた。南尾根パーテイーと奇跡の再会を果たしたのも何かの縁、と南尾根を下ることにする。森林限界に張った天幕で、全員で大晦日と正月山行を祝い、翌日は、白沢天狗尾根のパーティーと待ち合わせした大町温泉郷へと、下って行った。結局、 一番楽をしておいしい思いをしたのは、ラッセル知らずの私たちだったらしい。

〈コースタイム〉
12月30日 鹿島部落(6:45) → 1630m地点(9:05~9:20) → 1970m地点(11:30)
12月31日 1970m地点(7:25) → 爺ヶ岳山頂(10:50~11:20) → 南尾根分岐(12:05) → 森林限界(12:45)
1月1日 森林限界(7:55) → 林道(9:15~9:30) → ゲート(10:30~10:50) → 大町温泉郷(11:40)

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