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発端丈山~葛城山
服部 寛之

山行日 1992年2月2日
メンバー (L)服部、箭内、牧野、高木、安田(直)

 2月2日(日)朝、参加者5名、小田急線本厚木駅に集合、厚木インターより東名に乗り沼津をめざす。真っ青な快晴の空の下、一昨日の金曜夕刻より降り積もった大雪で高速道路から眺める丹沢や富士、箱根の山々は白銀に輝いている。今日は当初金冠山から真城峠の予定であったが、大雪のため登山口の戸田峠(標高700m位)への車の乗り入れが危ぶまれたので、同じ西伊豆の発端状山へ計画を変更することにした。だが伊豆はやはり暖かいのか、沼津インターで降りた町並みには、東京の大雪がまるで嘘のように、降雪のあとは全く見られなかった。国道414号を抜けて登山口の内浦(長浜)へは、本厚木駅より1時間ほどで到着。昭文社の『山と高原地図20伊豆』にでているPマークは有料駐車場で、すでにいっぱい。向かい側のシーパラダイス(ラッコがいるとか)もかなりの車で賑わっている。狭い裏道に入ってみると、田舎生活には欠かせない住民の車がひしめくように置いてあったが、だが道幅のやや広いところをみつけ、家事遂行中のおばちゃんに断って塀いっぱいに停めさせてもらう。これでタダで駐車できた、シメシメ。
 海抜410mの発端丈山へは、海抜2mの道路から一気に400mを登ってしまう。喜多神社の脇を通って、収穫を忘れられたみかん畑を抜けると、林の中の急登が始まる。小さなジグザグ登高を繰り返して行くと、コンクリート造りの展望台があったので、そこで一本とることにした。この前の岩つばめで『多言症』と診断されてしまったミセス安田は、「この上りではしゃべらないぞッ!」と名誉回復?に努めているのでいつになく静かだが、「いつまでもつやら」というのが残り全員の一致した評価である。展望台の少しうえ、350m位からやっと雪がでてきたと思ったら、じきに発端丈山の肩の広場に飛び出た。あっぱれ、ミセス安田はみんなの予想に反して頑張り通したが、だが1時間も節言状態に置かれていたため、いささか具合が悪くなってしまった。やはり彼女の場合、吐く息が必ず声帯を通過しないと生命があやうくなってしまう体質であるらしい。
 飛び出た肩から100m弱行った所がバツグンに景色が良いので、そこで鍋にする。眼下の駿河湾ば蒼く凪いで、湾奥に横たわる太い弓状の砂浜に沿って大きな市街地が、雪の富士山にいだかれるように広がっている。おおらかに湾曲した蒼い海としなやかに伸び上がる白い稜線の絶妙な配置! 日本の正しい風景! というのがあるとすれば、まさしくこれがそうだ。平和を絵に描いたような、お風呂屋書割風とも思える景色の中で、けんちん汁が煮えていく。ビールをあければ秘蔵の『鯨大和煮』も出て、この日の鍋座は静かな盛り上がりの中でのんびりと進行していったのであった。
 満腹になったところで、腹ごなしに葛城山まで行ってみることにする。100mくらい行くとこんもり盛り上がった発端丈山のピーク。展望はあまり良くない。葛城山までの道も展望はところどころしかないが、良く踏まれてちょっとしたハイキングにはもってこいの道だ。何組かのグループと行き交ったが、服装も足元も街にでかけるような格好の、一見してハイキングのシロート?とおぼしき人達もちらほら見える。大雪の降ったあとで山道は滑りやすいだろう、などとは思いもつかないのだろうか。40分程行くと、例の岩のゲレンデのある城山への分岐点で、そこから道はいったん尾根をはずれ舗装された林道を葛城山ピークの西側直下まで歩き、再び急登を登り返してピークに出る。
 葛城山頂は公園風にきれいに整備されていて、360度の大展望。一点の雲もない完璧な青空の下、先程の発端丈山はもちろん、富士山、そのはるかむこうに白銀の南アルプス、北東には箱根の山々、南には天城の稜線が幾重にも濃淡をなしている。実に気分が良い。北側からはロープウェイで上がって来れるが、ロープウェイは今日は整備休業らしくお客は誰もいない。
 少々のんびりと休んでから、来た道を発端丈山へ戻る。鍋座の場所では、写真撮影のグループが数台の三脚を据えつけて日の沈むのを待っていた。発端丈山からの下りは、北側の尾根道をおりてみることにする。葛城山への稜線の道もそうだったが、生えている低木はなぜか圧倒的メッカ的にアオキが多い。途中放棄されたみかん畑の中に夏みかんがなっていたので、おみやげにひとり1個づつもらう。その付近には梅も咲いていて、春の予感が嬉しかった。
 お待ちかねの温泉は、伊豆長岡の共同浴場へ行った。昔懐かしい木造の古い造りで、男女の脱衣場の境にある番台が実にうれしい誘惑的な低さであった。湯殿はタイル張りで、中央に大人4~5人でいっぱいになる小さな楕円形の湯ぶねがあるだけ。湯水の蛇口は無い。泉質は単純泉で、ぬるくもなく熱くもなくといったところ。熱め好きにはいまいち中途半端であった。
 帰路は再び414号線に入り、沼津市街の手前で食事をし、東名で厚木に出て本厚木駅で解散した。皆さんおつかれさまでした。

〈コースタイム〉
車(10:45) → 喜多神社(10:50) → 発端丈山ピーク手前好展望場(鍋)(11:50~13:40) → 葛城山(14:45~15:10) → 発端丈山ピーク(16:10~20) → 内浦学校前(17:15) → 車(17:25)


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