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夢の権現岳
荒川 洋児

山行日 1992年8月1日~2日
メンバー (L)斎藤、鈴木(章)、服部、菅原、荒川

 別に、権現岳は夢のように素晴らしかった、というわけではない。単に3ヶ月も前の事を書いているので、すでに夢の中の出来事のように記億がおぼろげになっているだけである。あの時の暑さもいまでは夢のようですらある・・・。

 さて7月31日の夜八王子に集まった我々は菅原号に乗って一路小淵沢ヘ、そして天女山へと向かった。
 深夜の甲斐大泉駅でトイレによったり水を水筒につめたりした後で、天女山への道に入る。どの辺に車を留めてテントを張るかで迷った末に(なぜこんな事に時間をかけていたのかが今となっては思い出せない。単にテントを張る場所が見つからなかっただけか?)結局舗装道路の終点で道路上にテントを張ったと思う。

 翌朝は晴れ。さすがに晴れ女を自称する斎藤大先生がリーダーを務めるだけの事はある。車を適当なところにおいて、舗装の切れた道を歩き始める。少し先で道路から別れて登山道に入った。しばらく登ると、天女山の頂上に着く。ここは広くてテントがいくらでも張れそうだ。見つかったら怒られるだろうが。なんとここまで道路が続いていて車でも登ってこられるようになっていた。
 そしてここから本格的な登りが始まった。背の高い木はあまり無い、結構な登り、晴れ、そして8月の八ヶ岳。これだけ条件がそろえばそこはもはや暑さの殿堂と言えよう。とにかく暑い。
 途中から見えた権現岳方面は、頂上付近が雲に覆われていた(すでに天女山で見えていたような気もする)。が、そこまでの道はあまりにも遠く、そして急だった。
 それでも暑い暑いと騒ぎながら登っていくうちに、三つ頭に着いた。行く手に望む権現岳の頂上は雲に包まれ、まだまだ高くそびえている。その光景にあそこまで行けば涼しいと気力を沸き立たせるか、はたまたまだまだきつい登りがあるとがっくりくるか。
 やっと着いた権現岳はガスがかかっていて、我々はやっと暑さから解放された。ここで別ルートから登ってくる今村さんと会杜の人を侍つ。例によってうまくいかないもので、しばらく頂上で休んでいると今度は風が冷たく感じられてきた。ほんとに山に行って丁度良い気侯というのはなかなかお目にかかれない。
 しばらく侍っていると、編笠山から来ると思っていた今村さん達が甲斐小泉からの尾根を登ってやって来た。無事の再会を喜んだ後(という程おおげさなものじやないが)、今夜の幕場編笠山手前の青年小屋に向かった。この稜線の出だしは岩稜になっていて、鎖場などはないが気持ちの良いところだ。
 青年小屋は下りきったコルにあって、わんわん吠える大が迎えてくれた。小屋に近づいたころガスが濃くなって今にも雨が降り出しそうな雰囲気になってきた。急いでテントを張っているときについに降り出したが、何とかセーフ。しかし少し遅れて着いた今村組は雨にやられていたようだが、じきに雨はやんだ(と思う)。
 ここにはありがたいことに水場があるので酒を冷やしておく。夕食を食べて酒飲んで杏仁豆腐を食べる。気の毒なことに菅原氏はこんなおいしいものが食べられないそうだ。なんか自分の取り分が減るのを嫌って、みんなでよってたかって無理矢理に杏仁豆腐嫌いと決め付けていたような気もするが、きっと記憶違いだろう。何しろ3ヶ月も前の事だ。それにしても山の中で杏仁豆腐が食べられるのは偉大なことである。

 翌朝は昨日とは違って(それとも昨日の続きのようなというべきか)曇り空だった。隣の今村組は一足先に出発している。幕場を出ると編笠山への登り口は岩がごろごろしている斜面になっている。岩の上に所々につけられたペンキを頼りに登ってゆく。たしか登り口付近に悪天侯の時は迷いやすいと注意を促す看板があったように思う。少し登ると登山道は樹林のなかに入る。じきに編笠山頂上。頂上は樹林が切れていて天気がよければ展望は良さそうだが、あいにくの天気のせいか風景はあまり印象に残っていない。
 ここからは小淵沢まで下り一方。途中で今村さん達に追い付いて、後は登山口まで一緒に下った。
 登山口で菅原氏が今村さんの車で菅原号の回収に向かった。その間に残ったメンツは少し下ったところにある水場で、昼食のソーメンの準備をする。しかしすぐに作り始めたのでは菅原氏が戻ってくるまでにのびてしまうので(あれ、ソーメンって伸びたか?)その辺をぶらぶらしていると、章子大先生が野生のクランベリーかなにかを見つけたので、しばらくそいつを集めるのに熱中する。集めたものはすべて斎藤さんに献上してジャムが出来上がったらいただく予定だったのだが、彼女からは未だにジャムは送られてこないのだ。困るなぁ忘れてくれちゃ。
 それから水場の脇でソーメン作りが始まった。ここの水は道路のすぐ脇にあるのだが、結構有名なようでときおり水を汲みに来る人がいる。なかにはわざわざ水汲みのために来たと思われる人もいた。そういった人々や通りかかる車の人達が胡散臭そうにこっちを見ていることなど気にせずに、ソーメン作りは着々と進行していく。そしてちょうど出来上がったときにまるではかっていたかのようなタイミングで菅原号が到着した。
 おいしいソーメンを会べた後は、菅原氏が発見した?立派な風呂に入って帰った。


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