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笛吹川東沢 釜ノ沢
吉田 久美子

山行日 1992年7月18日~19日
メンバー (L)今村、福間、田代、吉田

 7月18日(土)
 昨晩からの雨は降りつづいている。なぜか私が参加する山行は雨にたたられる。
 西沢渓谷の駐車場を8時15分に出発。二俣の吊り橋を渡った後、まず手始めに沢を渡り、しばらく山道を歩く。山の神を過ぎたあたりで河原に降り、いよいよ遡行開始。私にとっては全く未知の世界なので、ルートをはずして深みにはまってはいけないという思いもあり、とにかく今村さんのうしろを必死でくっついて歩く。途中、初心者むきに用語の解説や、場所の説明をわかりやすく丁寧にしてくださり、ありがたかった。
 東のナメ沢では、少し上の方へ上がって、写真を撮ろうということになった。白状すれば、岩は水苔がついていて滑るという当り前のことさえわかっていなかった私は、ちょっと滑ると、恐怖でおよび腰になり、進めなくなってしまう。
 魚留ノ滝を捲き、千畳のナメが現れたときは、年がいもなく喚声をあげてしまった。河床が一面にナメ状になっているなんて、生れて初めて見る光景である。
 このあたりまで来ると、「初めての沢なのに、ここまで何とかやってきたゾ!」という思いで、嬉しさがジワジワとこみあげてきて、一人でニヤニヤしてしまった。
 両門ノ滝を過ぎたあたりで、今村さんが、「もう今日は、厳しいところはありませんからのんびりいきましょう」と言ってくださり、ホッとする。
 幕営予定地に3時前に着いた。この頃にはすっかり雨もあがり、絶好のたき火日和。4人で流木を拾い集め、早速点火。次第に暮れてゆく空を眺めながら、夕食をすませる。ビールを飲み、それぞれの思いに浸る私たち。燃える炎、満天の星、川のせせらぎ、こんな静かな時を過ごすのは何年ぶりだろうと話しながら、しみじみと感動的な夜が更けていった。

 7月19日(日)
 快晴。予定を少し過ぎて5時30分出発。
 昨日と同じように必死でついて歩く。「ここが木賊沢の出合です」という所で沢とはお別れ。やっぱり緊張していたのか急にザックが重く感じられる。甲武信小屋のあたりに荷物を置き、甲武信岳へ。富士山がくっきりと見える。金峰山、両神山、大菩薩・・・・かすかに鳳凰三山も見える。
 戸渡尾根を下り、1900mを少し下ったあたりで、予定通りにヤブこぎ開始。これも私には初めての経験である。
 ちょっと油断すると、倒木につまずきそうになったり、笹で目を突きそうになる。かといって、目の前ばかりに気をとられていると、今村さんの歩いていく方角を見失いそうになるので気が気でない。この、目の前と少し前方に交互に気を配るというのは、慣れない私にとって、なかなか神経を使う作業であった。
 ヤブをこぐこと3時間。無事に東沢の河原に下りたつことができた。
 こうして、初めて尽しの心に残る貴重な2日間は終わった。
 皆さんどうもありがとうございました。

〈コースタイム〉
18日 西沢渓谷バス停(8:15) → 山の神(10:05~20) → 魚留の滝(12:20~30) → 両門の滝(13:20) → 広河原(14:55)
19日 広河原(5:35) → 甲武信小屋の水場(7:30~55) → 甲武信岳(8:30~9:00) → 戸渡尾根分岐点(9:40~50) → 1870m峰(11:25~30)(ここより藪尾根に入る) → 東沢堰堤上(14:35~55) → 西沢渓谷バス停(15:30)

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