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姥沢南ノ入右俣
鈴木 章子

山行日 1992年9月12日~13日
メンバー (L)鈴木(章)、荒川、箭内、朝岡

 「登山大系・巻機周辺の沢」でこの名を知る。遡行図に滝マークが80。その名は
「姥沢」
「オー、コレハワガ沢、行カナケレバ」
 イヤがる荒川君、はしゃぐ箭内さん、不運続きの飯塚さん、右も左も分らぬ朝岡君を共に、イザ六日町。タクシーの運転手もこの沢は知らない。降ろされたのが、神字入り沢(上流は金山沢)。姥沢はもう1本手前の沢、地図を見ながら国道を戻る。途中で会った土地のオバチャン、「金山沢へ行く人はいるが、ウバッツワヘ行く人は、聞いた事ないね」
 『姥沢は、南ノ入りと北ノ入りに分けられる。南ノ入りは、ナメとスラブの登攀に終始、源流部のやぶこぎも少なく稜線に出られる。美しく女性的な印象を与えられる沢である』
 この名文も、20年前では、化石化してしまった。沢も歳をとったのか、醜女化?してしまった。
 入沢してすぐ北ノ入りとの出合、二俣までは沢にヤブがかかり、うんざりしてしまう(ガイドブック通り)。二俣から右の入りに入る。水量は左の入りの方が多い。この時点で、これから行く沢の上流が見渡せる。ここから沢は、90度(これはウソだけれど)の角度でひたすら登って行く。枝沢は1本もない。幕場もゼロ。沢巾は3~4m。両脇の木や笹につかまりながら登って行く3m、6m、10mの滝が続く。この間の滝への距離といえば、長くて2~3m、時にはテラス程度の所も有る。
 二俣からの標高差900m。これを一気に登る、展望の沢だ。六日町、湯沢町が眼下によく見える。広大な田園風景、実りの秋も近い。
 「落ちたら二俣」を合言葉に、上へ上へ。「沢の中で焚火」は夢だったけれど、過ぎてしまえば面白い中中の沢だった。ツメの時、少し早すぎたけれど、何とか登山道へ。山頂近くに幕を張る。山頂一帯は湿原で、池塘が二つある。ここからの展望もすばらしい。越後三山、谷川一帯、他は知らないが美しい。今宵は十六夜、池塘に月でも浮かべようか。
 翌日、ここから巻機への縦走を試みたが、廃道化して使えない。南ノ入り山頂は、笹も刈ってあり歩きやすいのだが。
 南ノ入りから上長崎に向かう尾根をまっすぐ下る。この道も、手入れされているのは上部だけ。後は廃道に近い。尾根は細く急である。しかもかなり長い。麓の入口には「巻機山登山道健脚向約8時間」と記されているが、これは何時の指導標やら。
 上長崎の国道から、南ノ入り左・右俣共によく見える。

〈コースタイム〉
北ノ入・南ノ入分岐(8:40) → 二俣(10:30) → 3段26m滝(12:00) → 露岩帯(15:30) → 登山道(17:00) → 幕(17:20)


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