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入笠山
服部 寛之

山行日 1993年2月20日~21日
メンバー (L)服部、金子、吉江、井上(博)

 今回の入笠山は、デナリ(マッキンリー)遠征のためのスキー及びソリのトレーニングということで企画した。デナリでは、クレバス対策のためにアンザイレンしたうえでスキー(またはスノーシュー)を履き荷物をソリに乗せて引っ張るというスクイルで登下山することになるので、どういう具合になるのか実際にやってみようという訳である。参加者は金子氏と吉江君と私、それに別行動で山スキーをやる井上(博)氏であった。
 たまたま同日勝部氏の自岩岳の例会が同じ山域であるので、車で一緒に行くことになり、19日金曜の夜JR八王子駅前に集合し、9名が2台の車に分乗して中央道小淵沢インター経由で入笠山東面の林道中腹の駐車場まで入った。
 翌20日は良い天気に恵まれ、勝部パーティーと井上さんは登山道を行き、われわれ3名は轍のついた未除雪の林道をアンザイレンしてスキーでソリを引きながら登って行った。用意したソリはプラスチック製の子供用スノーボート2台で、それにテントやスコップ、コッヘル、食料等を積み、先導者の後を後続の2人が1台づつソリを引くというスタイルで行った。ソリは轍でできた段差のためときどきひっくり返ることがあったが、マア初めてにしては結構順調に登ったと思う。途中何台か4WDが登ってきて、ジロジロみられたりクスクス笑われたりして、ちょっと恥ずかしかった。吉江君曰く、「そ、そうじゃないんだッ!と、思わず叫びたくなりますよね」
 1時半頃マナスル山荘に着くと、既に入笠山頂上から一滑りした井上さんと思いがけなく早く合流した。マナスル山荘前は小さなスキー場になっていて(リフトやロープ等は一切ない)、一休みした後スキー場上部まで登って滑ってみたが、私は圧雪してない重い雪では板が思うように回らず、自分の技術の無さに気落ちしドッと疲れた。次に山荘裏手の牧場に登って滑ってみたが結果は同じで、普段ゲレンデで滑れているつもりが如何にマヤカシであるかが非常によくわかり、さらにドッと疲れた。井上さんは吉江君ともう一度山頂から滑りに行ったが、金子氏と私はスキーはもうやめて近くにテントを張ることにした。その日の夕食は白菜強調後期うどん投入型の豪華鍋(鱈入り)で、我々はソリの偉大な搬送力をここに確認し、大量物資流通山行のシアワセを満喫したのであった。
 満天の星だった空も、翌日は朝から重い雲に覆われていた。朝食・撤収後、井上さんはスキー、他の3人は入笠山に登った。頂上まで20分。360度の展望だが、雲のため遠望は効かなかった。
 帰路はきのうの林道を逆に下りることにした。初めの1時間は上りで、アンザイレンはせずに2人がソリを引いたが、出発早々私のスキーのビンディングが一部壊れてしまい、歩行ができなくなってしまった。そのため私は林道最高地点までソリを引いて歩くことになった。途中で雪が降り始める。
 最高地点からは、ソリを縦に連結し、ひとりが牽引しもうひとりが後ろでブレーキ・コントロールするというスタイルで下りてみた。この方式はうまくいった。ソリは連結すると安定性が格段に増し、かなりのスピードでもひっくり返ることはなかった。後方のブレーキ役は、ともするとスキーがコントロール用のロープを跨いでしまいがちで、また牽引者のスピードや雪面の突然の変化に対応せねばならないため、それなりの技術が要る。スキーの上手い方が後ろについた方が良いようだ。林道の下りは当初1時間半くらいかかると思われたが、結構順調に滑って50分ほどで駐車場に着いた。駐車場では、先に下りていた勝部パーティーがお茶を沸かして待っていてくれた。
 今回実際にスキーでソリを引いてみて、3人ともこれならなんとかなりそうだという感触を得られたように思う。


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