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八ヶ岳・旭岳東稜
金子 隆雄

山行日 1993年2月12日~14日
メンバー (L)金子、荒川、飯塚、吉江、朝岡

 八ヶ岳の東面を訪れるのは久しぶりである。前回来たのは1986年の12月だから約6年前になる。その時も同じ旭岳の東稜を登ったのだが雪がまったく無くて薮に苦労させられたが、今回は雪が豊富で前回とは違った登攀を味わうことができた。
 2月12日、清里駅に早朝に着いてバスの時刻を調べたがこの時期は運行していない。タクシーを呼んだらワゴン車が来たので駅にいた3人の登山者と相乗りでたかね荘まで入る。たかね荘から雪に埋もれた林道を辿り、地獄谷を溯り約2時間で出合小屋に至る。小屋でしばらく休息する。小屋に置いてあるノートを繰ると6年前に我々が書き残したものがまだあった。この時のパートナー達は2人共もう会にはいない。目的の旭岳東稜に向うべく出発する。行手には権現岳東稜を登ると言っていたパーティの踏跡が続いている。
 赤岳沢を右に見送り権現沢に入り取付きと覚しきルンゼを登り始めた。記憶によれば容易に尾根上に出れるはずだが、かなり微妙なトラバースを強いられザイルを出すことになる。さらにその上部も悪く尾根に上がるまでに多大な時間を費やしてしまった。苦労して尾根に上がりラッセルしてしばらく前進したがどうも様子がおかしい。尾根の行く先を辿って見るとどうしても権現岳に行き着いてしまうのだ。そうなんです我々はルートを間違えて権現岳東稜を登っていたのだ。このまま登ってしまおうとも考えたが、パーティの力量と人数を考えると不安があるので下降することにする。少し戻り容易な所を選んで権現沢左俣に下り立ち、旭岳東稜の取付きを確認して出合小屋に戻り今日は小屋泊りとする。今回の山行は日程に余裕があったのでルートを間違えても笑って済ますことができた。
 2月13日、天気は昨日同様に良く取付き点も確認してあるので楽な気持で出発する。権現沢に入ってすぐの傾斜の緩いルンゼを登って行くと容易に尾根に出られる。登り口には赤布があり目印となる。尾根を進むとほどなく細くなり岩稜となる。左側の権現沢右俣側は切れ落ちているので右の上ノ権現沢側を通過していく。やがて急傾斜の木登りとなるがここはルートをうまく選ばないと苦労させられる。尾根はいったん傾斜を落としその後急な雪壁を登りきると肩に出る。ここからが核心部となり、正面は5段60メートルの岩壁となっており左手は急な草付きとなっている。正面の岩壁を避けて草付きを登ったがピッケル1本で登りきるのはかなり苦しい。ダブルアックスなら多少余裕をもって登れる。この草付きを登りきるとキノコ雪の付いたナイフリッヂとなっている。途中ブッシュにビレイを取りながら1ピッチザイルを延ばす。さらに容易な雪稜を進み、左上するバンドから右に90度方向を変えて岩が露出しているところを越えてザイルを解く。細い雪稜を30メートルぐらい登ると縦走路に出る。今まで風下での行動だったので風に吹かれることはまったくなかったが、稜線上はかなりの風で寒気が厳しい。人数が多かったので旭岳に全員そろうのにかなり待つことになったが、全員無事に登攀を終了しキレット小屋に向う。キレット小屋は冬期開放していないので小屋の横にツェルトを張る。
 2月14日、今日は風が強く視界も良くないが行者小屋へ向けて出発する。昨日の午後から行者小屋へ入山しているはずの植村パーティと無線交信を試みるが入感なし。文三郎道への分岐付近でルートを見失いそうになったがなんとか行者小屋へ下ることができた。行者小屋で植村、鈴木(章)、別当の3人と合流し帰路につく。

〈コースタイム〉
12日  たかね荘(7:40) → 出合小屋(9:50) → 出合小屋戻り(16:00)
13日  出合小屋(6:30) → 肩(10:35) → 旭岳(15:30) → キレット小屋(16:30)
14日  キレット小屋(7:30) → 行者小屋(9:40)

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