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幽ノ沢・石南花尾根
金子 隆雄

山行日 1993年3月27日~28日
メンバー (L)金子、吉江

 今年の冬の最後の山行として石南花尾根を登った。この尾根は短いながら変化に富んでいてなかなか手強い。
 3月27日、あまりぱっとしない天気だが今日一日はなんとか持ちそうだ。幽ノ沢の出合からわりとすぐの展望台と呼ばれる台地に登ると、これから登る石南花尾根を見渡すことができる。石南花尾根はV字状岩壁前衛壁とV字状岩壁を縁取り堅炭尾根へと続いている。展望台から延びている尾根を少し登り、ノコ沢をトラバースして石南花尾根に取付く。下部はその名の由来通り石南花のたくさん生えている中をラッセルしていく。左側に張出した雪庇に注意が必要だ。急に傾斜が強くなるブッシュ帯に入るがここらへんからアンザイレンしたほうがいいだろう。我々はノーザイルで登ったので苦労させられた。凹角を登りきったあたりでアンザイレンする。雪は不安定でかなり緊張する。P1、P2と越えていき途中10メートルぐらいの懸垂下降をする。やがて最後の核心部となる水平な鋭いナイフリッヂとなる。雪を崩しながら這って一歩一歩慎重に進む。両側はスッパリと切れ落ちており片足を置く分のスペースしかない。ここを過ぎれば登攀は終了したも同然だ。あとは脹ら脛が痛くなるほどの急雪壁を200メートルほど登ると堅炭尾根に出る。この尾根は短いわりには出合から9時間を要した。技術的には難しい部類に入るだろう。堅炭尾根上にテントを張って今日の行動を終了する。
 3月28日、一ノ倉岳まで登り本峰経由で西黒尾根を下降する予定であったが、今日は天気が悪そうなので本格的に崩れる前に下りることにする。堅炭尾根をしばらく下降しBルンゼを下降する。下降点は初めてだと分りづらいが踏跡があったので助かった。下り始めはかなり傾斜が強いが歩いて下りれる。堅炭沢をトラバースしK稜裾尾根に上がればすぐに展望台に戻れる。このルートの下降は時間的にかなり速く約1時間で幽ノ沢の出合に下りることができる。


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