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四郎沢~鬼怒沼
山沢幸子

山行日 1993年6月26日~27日
メンバー (L)勝部、江村(し)、山沢、安田、松永、小林(勝)、澁谷、山沢

 春の木の芽時になると、私の病気がウズく。山へ行きたい、山へ行きたい・・・・・と。膝の不安、体力の不安があるため、子ども・友達を誘い我がままのきく山行を計画した。ところが2回共雨でお流れ(軟弱者の集まりの為、雨が降ると中止)。そんな時この山行が頭をかすめた。昔行った会津の藪コギを思い出し、無謀にも「行きたい」という気持ちがふくれて、どうしても離れない。意を決して参加を申し出たけれど、一晩寝ないで考えた。
 「どうしても無理」、という結論から次の日リーダーの勝部氏へ電話した。ところが優しい勝部氏は「四郎岳へ行かないなら10時間のヤブコギが3時間位縮まり7時間位だから大丈夫ですよ、行きましょうよ」と。私の為に行程まで変えてくれたのじゃ、行かなくてはならないな!と覚悟を決めて出発しました。
 6月26日
 前夜、あけみさんの差し入れのビールと各自のお酒で、電車の中は酒宴場と化し、沼田の仮眠場所では熟睡でした。4時にタクシーの運転手さんに起こされ、一路丸沼温泉ヘ。
 5時45分出発で四郎沢へ入る。沢は水が少なく、ゴーロを抜け赤茶けたナメを少し行くとすぐスラブになってしまった。岩はボロボロでフリクションがきかない為、高捲く。水を補給する前に高捲いてしまったため、水を探して1時間ロスしてしまった。沢にいたのは1時間位で魔の12時間ヤブコギ耐久レースが始まった。
 雨も降りだし、急登のヤブコギにうんざりする頃、やっと燕巣山(2222)ヘ到着。朝から5時間半経過、もう11時10分になっていた。
 濡れている為立ち止まると寒く、行動食をちょっと食べてすぐ出発。尾根沿いならばヤブコギも少しは楽かと思ったのもつかの間、倒木と笹とシャクナゲと岩とのヤブコギ。なかなか前へ進めない。満開のシャクナゲの花も美しいと感じている余裕なし。堅くてひねくれている枝が足を挟んで離さない。誰が言ったかシャクナゲ地獄・・越すに越せない倒木地獄・・。三角点のある2098.7のピークを越え、次ぎに来るは笹ヤブ地獄。鬼怒沼の避難小屋へ入れば雨に濡れない夜を過ごせると思い、最後の力をふりしぼり毘沙門山(2113)へ着いたのが午後5時半、雨のせいもあり少し薄暗くなっていた。そこからの踏み跡のある道のなんとありがたかったこと。避難小屋へは6時到着、何と朝から12時間のヤブコギでした。
 小屋での酒盛りも盛んで、ザックの中から手品のように出てくる酒とつまみ。そして、我々若者が9時過ぎに眠るとき、まだ飲んでいた江村さん達は朝4時に目を覚ますとまだ飲んでいた・・?
 6月27日
 次の朝は良い天気、まだ誰もいない静かな鬼怒沼湿原を行き、日光沢温泉ですばらしい野天風呂へ入り、女天淵温泉に向かったのでした。
 これだけヤブらしいヤブの山は初めてでした。中毒になりそうです。けもの道すらない。人の気配がまるでない。たった1本みつけたポカリスエットの缶は6年前のものでした。そして雨が降っていて周りの景色がまるで見えないのに、磁石と地図で適確に進む勝部さんと安田さん・・尊敬!
 朝5時に起きたら、山菜ゴハンとマーボナスができていて、よそってくれた小林さん・・感激。出発の夜、ビールの差し入れを持ってきてくださり、赤羽まで送ってくれたあけみさん・・ごちそうさまでした。
 ヤブは初めてと言いながら、うらやましいほどの長い脚でモクモクとヤブコギをしていた松永さん。
 ばてる、という言葉をしらない明るい澁谷さん。
 酒を飲むと(飲まなくても)エッチな話を始める江村さん。
 とても思い出に残る山行でした。とにかく迷惑をかけなくてよかった。

〈コースタイム〉
1日目  四郎沢出合い(5:45) → 燕巣山(11:10) → 毘沙門山(17:30) → 鬼怒沼非難小屋(18:00)
2日目  非難小屋(6:30) → 日光沢温泉(8:10~9:30) → 女夫淵温泉(11:00)

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