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三峰と出会って
石塚 秀夫

 当時、ルームが開かれていた御茶ノ水の喫茶店「ローズウッド」の扉を、おそるおそる開けた瞬間が私と三峰との出会いの始まりである。
 早いもので、もう2年6か月が経ってしまったが、私の入会後の山行の歴史を振り返ってみると寂しいかぎりである。指を折って数えられる程度しか登っていない。
 なぜ少ないのか、決して山が嫌いなわけではない。いやそれどころか、山が恋人と言っても過言ではない。頂上から眺めた壮大なパノラマや雲海など、下界の生活では味わえない深い感動を与えてくれる。晴れた早朝に御来光を仰いだ時など、その神秘的な光景に思わず「山は人生だ」と妙に悟りを開いた気分になる。
 では、なぜなのか、きっと生来の出不精が原因なのかもしれない。あるいは、年とともに気力がなくなって軟弱になったのかな。
 こんな貧弱な山行歴でも幾つか脳裏に浮かぶものがある。水不足で苦しかった夏の谷川岳、初めて経験した雪に埋もれた剱岳、厳しい斜面を草を掴みながらよじ登った巻機山、またその途中でメンバーの名人釣師が釣った一尺余あろうかと思われるイワナをつまみに酒を飲んだり、とても懐かしく思う。
 それ以外にも、素晴らしいものを得られたのも事実である。職場では得られない、気のおけない山ヤとの出会い、個人山行では経験出来なかった高度な技術での登山(素人の私にとって)、とかくストレスがたまりがちな日常生活を忘れさせるルーム後の飲み会など三峰の一員であればこその収穫であると思う。
 三峰山岳会は創立60周年を迎えましたが、これが更に70年、80年と存続するためには、我々の努力なしでは考えられない。そのためにも一会員として微力ながら、三峰のモットーである「生涯山行」を目指し、会の発展に貢献しなくてはと痛感している。


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