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中年クライマー奮闘記
安齋 英明

 今や世を上げての(?)クライミングブームである。アウトドアの岩場に行っても、インドアの人工壁に行っても、子供から老人まで幅広い年齢層の人々が懸命に岩に取り付いている。そして、かくいう私も、下手の横好きではあるが、その一人である。
 実を言えば、そもそも私が三峰に入会したのも岩登りをしてみたかったからであり(しかし、残念ながら三峰では、岩登り派は少数派である)、もっと早くから始めていれば良かったのにと、それが残念でならない。もちろん今更そんなことを言ってみても始まらないので、持ち前の凝り性振りを発揮して、家族の顰蹙を買っている今日この頃である。
 ところで、私が初めて岩場に行ったのは、2年以上も前になる。場所は奥多摩のつづら岩だったが、その時は悲惨の二字だった。何しろ、初めに3級のルートを1本登っただけで両腕がパンプしてしまい、後はほとんど何もできないに等しい状態になり、たちまち中吊りの憂き目を見る羽目になった。しかもそれまで中吊りになった経験などなかった上、ザイルやハーネスに対する信頼感もなく、落ちたら死ぬと思っていたので(もちろん、実際には中吊りになるだけで、下に落ちるわけではないのだが)、落ちる直前には本当に寿命が縮む思いをした。そして、自分の余りの非力にすっかり自己嫌悪に陥ってしまったのだが、性懲りもなく、その後もしばしば岩場に通った。そして、その度に自分の非力を痛感し、トレーニングを始めたのだが、これが運の尽きだった。腕力をつけるべく、毎日ダンベルリストカールを続けたところ、両手首周辺が腱鞘炎になってしまい、治療のため1年半もブランクをあける羽目になった上、医者から再起不能を言い渡されてしまった。
 そういうわけで、もう岩登りをすることもないかと思っていたのだが(たった3ヶ月の経験だった)、昨年(平成5年)5月に、三ッ峠で行われた岩登り講習会(リーダーはゲンさん)に参加したところ、さすがにほとんど登れなかったが、腕には余り痛みを感じなかった。そして、それ以来、再び岩場に通うようになった。熱中中年の復活である。とは言うものの、その後しばらくは月1回程度岩場に通うだけだったが、やがて転機が訪れた。それは身近なところに次々と人工壁がつくられたことによる。
 最初に人工壁を訪れたときは、その余りに急な前傾壁と、その前傾壁を登っていくクライマーたちに圧倒され、またもや自分の非力を思い知らされた。しかも、自分には、決してそんな壁は登れないだろうと思われた。しかし、その後思い直し、人工壁に通い始めたところ、最初は5.8しか登れなかったのに、1ヶ月後には5.10bが登れるようになった。我ながら意外というほかはない。この先どこまで登れるようになるのか、現時点では見当もつかないが、とにかくやれるだけのことはやってみようと思っている。岩登り興味のある皆さんは、ぜひ付き合ってください。よろしくお願いします。


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