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北国だより
吉田 久美子

 10月3日 快晴。愛山渓温泉(大雪山の北西に位置する温泉である)を7時に出発。ここには、「熊 出没中」の看板がある。北海道の山でこの看板を見たら、本当に熊がいるから注意するように、と言われたことを思い出し少し緊張する。ふもとから眺めた大雪の山々は、早くも雪化粧をして、真っ白である。
 清水沢に沿って歩く。途中には、いくつかの滝も見られる。まわりの木々が黄色や赤に色づき、北国の過ぎゆく季節が感じられる。
 1時間ほど歩いて、最後の大きな滝を捲いたあたりから、永山岳への急な登りが始まる。このあたりが、森林限界になっているのかいっぺんに展望が開ける。振り返れば、沼ノ平の湿原が広がり、池の青と、回りを彩る赤や黄の草や木、ほとんど黒に近いような空の青、これらの見事なコントラストに息をのむ。コースも雪に覆われてここから上は、一面の銀世界である。
 永山岳、比布岳を経て北鎮岳へ向かう。深いところでは、ふくらはぎの上あたりまで雪があり、結構歩きづらい。このシーズン、このコースで北鎮岳を目指す人は少ないのか、私たち以外に歩いているのは一人だけ。踏み跡のない雪の上を、やっとの思いでたどりついた山頂からの眺めは格別であった。旭岳、トムラウシはもちろん、十勝連峰、芦別岳などが見渡せる。遠くにかすかに見える山は斜里岳だという。ここは、北海道なのだと改めて実感する。
 ここからは、雲ノ平を経て黒岳へ。夏はお花畑で有名な雲ノ平もすっかり雪に覆われている。黒岳まで来ると雪はなく、一見して観光客だとわかる人でいっぱいである。あまりの軽装に驚いてしまう。七合目まで、ロープウェイとリフトで乗りついで来られるためだろう。リフト乗り場まで下る道は、ちょっとしたラッシュ状態である。リフトには乗れたものの、五合目のロープウェイ乗り場は長蛇の列。2時間待ちの声も聞こえてくる。帰りに乗るつもりのバスの時間まで35分。だめでもともと、駆けおりることにした。必死に走ったのに、5分の差で間にあわなかったが、お天気に恵まれ、すばらしい景色にめぐりあえて、最高の1日になった。

 と、こんな具合に、時々は山にでかけています。皆さんとご一緒できなくなって寂しいですが、山登りの楽しさを忘れないようにしたいと思っています。こちらへお越しの節は、声をかけてください。


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