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編集後記

 世の中には色が溢れています。実に実にいろいろな色に囲まれています。冬季オリンピックも終わり、いよいよカラフルな春です。雪景色のシンとした静けさの中にある「白」も大好きだけれど、色が光に包まれていく春は、なんだかやっぱりウキウキしてきます。今年の春も元禄の春に劣らずきっといい春に違いないのです。
 最近周りを見回して、色気が足りないなと感じます。世の中は、よくはわからないけれど不透明な色合いで、色気の無い(無粋な)話も多い。小さなことが何か面倒くさくなってしまって、つい色気(愛嬌)のない返事をしてしまうのです。色っぽい色気も私の周囲には足りないでしょうか。色彩の色と色っぽい「色」は違うけれど、どちらもこれからの世の中にはもっと必要なものなのでしょう。あんまり楽しくないことは忘れて、春色の場所へ出かけましょうか。

【澁谷】

 星座を覚えようと思って以来、勤め帰りの楽しみが増えた。にぎやかな大通りから一歩住宅地に入ると、街の灯りに隠れていた星たちが姿を現す。冬は特に空気が澄んで、星たちの輝きにも透徹さが増す。暗夜の空に散らばる微妙な色合いの光たち。何て美しいのだろう。殊更に己を主張し合うのではなく、ただそれぞれに与えられた生命を確固たるペースで燃焼させている星たちの姿には、交響的な平和が感じられる。
 愛と憎しみという二律背反を抱え込んだ我々の棲むこの星に、成熟した平和が根を下ろすのは、一体いつのことだろう。苦しみながらも我々の歴史は、憎しみを克服すべく愛と理性を育ててきたと、そう信じたい。地球全体がひとつの運命共同体となった今日、平和を根付かせるために為せることは日常生活と同じ基盤の上にある、そんな気がする。

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 60周年記念号に寄せていただいた原稿をこうして何とかまとめることができて、ホッとしています。編集の仕方にいろいろ不備な点がありましょうが、何分素人のこととて、ご勘弁ください。
 60周年記念特集の中身は、やはり60周年によせた会員会友皆さんの声とマッキンリー遠征の報告が中心となりました。当初はこの10年間の岩つばめから面白い報告を幾つか抜粋して載せようかとも考えたのですが、蓋を開けてみたら予想以上の分量で、そんな余裕はなくなってしまいました。編集の最後の段階になって、お世話になった筑波大学の浅野研究室から低圧トレーニング及び登山活動中に取ったデータの分析結果をいただくことができ、併せて掲載いたしました。これは言うならば、科学者の眼から見た三峰マッキンリー隊員の行動の記録です。この分析が学問的に如何なる意味を持つのか私には解りませんが、個人的にはこれまで思いもつかなかった視点から自分たちの登山を振り返ることができ、興味深い勉強をさせていただきました。この論文のお陰で、登山報告書としては貴重な付加価値の付いたなかなかユニークなものとなったのではないかと思います。この場を借りまして、浅野先生並びに同研究室の皆様に改めて篤く御礼申し上げます。

【服部】

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