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平成六年度春山合宿
丹後山~中の岳(A隊)
金子 隆雄

山行日 1994年5月1日~5月5日
メンバー (L)大久保、佐藤(明)、田代、金子

 今回の春山合宿は当会の合宿としては珍しく越後の山ということで期待して参加することにした。我々パーティのコースと日程は、5月1日から5日までで丹後山から中の岳を経て駒ヶ岳から駒ノ湯へ下るというものであった。メンバーは大久保リーダー、佐藤明、田代、金子の4名。初日には釣りをするというおまけもついている山行なのです。
 4月30日夜、上野駅に集合し田原会長、播磨さんの見送りをうけて出発する。合宿の度に見送りに来ていただいて有り難いと思っています。差し入れのビールとバーボンをチビリチビリとやりながら電車に揺られて高崎に着く。いつもの場所で一杯やってから眠りにつく。

5月1日 雨
 水上で乗り継いで六日町で下車。駅前で食料や酒を仕入れようと商店街をうろうろするが閉まっている店ばかりで、駅の売店までもが電車が到着してしばらくして閉めてしまった。
 タクシーで十字峡まで入れるかどうかを聞くと、ダムサイトから奥は通行止めになっているということで左岸のトンネルの中でタクシーを降り、雨の中左岸の道を十字峡まで約1時間歩く。後に聞いた話では右岸の道は十字峡までタクシーで入れたそうだ。うーん騙された。でもタクシー代が安く済んで、まいいか。十字峡から三国川本流左岸沿いの半ば雪に埋もれた林道を更に奥に進むと今日の幕営予定地の栃の木橋に着く。適当な場所がなかったので雪のない橋の上にテントを設営し早速付近で釣りをするがさっぱり釣れない。夕方田代氏が釣りをするといってテントを出ていったが程なく食べごろなイワナを一匹提げて帰ってきた。流石に釣りに凝っているだけのことはあると敬服する。

5月2日 曇り
 昨日からの雨は止んだが今一つはっきりしない天気の中、丹後山目指して出発する。栃の木橋を過ぎてすぐに林道から離れて登山道に入る。いきなりの急登にひと汗かくと鉄砲平に着く。名前から想像できるような広さはない所だ。この先も急登はまだまだ続く。樹林の中で展望もないため背の荷物が一層重く感じられる。また本格的な山行は半年ぶりなので鈍った体が悲鳴をあげている。樹林が疎らになり尾根らしくなってくると視界が開けて中の岳や五竜岳が見渡せる所に出る。たぶん地図にあるカモエダズンネだろう。この「カモエダズンネ」とはいったいどういう意味だろうと話題になったが誰も知っている者はいなかった。ずっと気になっていたので帰ってから調べてみたら、カモエダというのは沢の名前でズンネとは尾根という意味だそうだ。地図上ではある一点を指しているように書かれているが実はこの付近一帯の尾根をそう呼ぶようだ。
 ジャコの峰、ジャコの平と過ぎて笹原の中の道を行くようになるとガスの中に小屋が見えてきた。丹後山の避難小屋だ。二階建の頑丈そうな小屋で中に入ると既にかなりの人で混んでいる。二階が空いていたので二階の一角に陣取り宴が今日も始まる。

5月3日 晴れ
 今日は行動時間が短いので朝はゆっくりと一番最後に小屋をでる。すっきりと晴れ渡った空の下、丹後山の頂上へと歩き始めてすぐに頂上に着く。丹後山はなだらかな笹の平原状で標識がないとどこが頂上かわからないような山だ。雪が融けてかなりの部分夏道が出ている稜線を次のピークの大水上山へとのんびり歩く。大水上山には利根川の源流の看板がある。地図を見ればすぐわかることだが、そうかここがあの利根川の源流なのかとなんだか感動してしまう。しばらく行くとまた大水上山のピークがある。あれ?どうして?歩いた距離から推測するとこちらが大水上山のようだ。兎岳ではテントのフライを乾かしながらのんびりする。遠くに荒沢山がひときわ鋭い山容を見せている。中の岳へは一旦下ってからまた登り返すが登りはけっこう辛い。十字峡への分岐の池ノ段は見過ごしてしまってわからなかった。中の岳の山頂には立派な方位盤があり周りの山々を特定するのに役立つ。中の岳の避難小屋は一階出入口が雪に埋っており二階の窓から出入りできるようにハシゴが掛かっている。二階は狭いので一階に降りて荷物を広げる。
 今日、十字峡から日向山を越えて中の岳へ来ることになっている服部パーティと無線交信するが、H氏が体調を崩しているため今日は日向山泊りとすると伝えてきた。丹後山経由で平ヶ岳方面へ向かっている勝部パーティは順調に行動しているようだ。日向山付近に設営している服部パーティのテントが見えるというが目があまり良くない私には見えない。
 暗くなるまでにはだいぶ時間があるが酒宴が始まる。行動時間が短くなるにつれてそれと反比例して酒を飲む時間が長くなる。アルコール類も今日で飲み尽くしてしまいそうだ。今日この小屋に入っているのは荒沢岳から縦走してきた4人パーティと十字峡から服部パーティを追い越してきた単独行の青年、そして我々と少ない。

5月4日 曇り後晴れ
 昨夕は予定通り駒ヶ岳へ行くと強い信念を示していたリーダーだったが、今日の天気を懸念して日向山経由で十字峡へ下山する決定を下した。天気予報では午後から雷雨の可能性を伝えおり風もけっこう強い。中の岳から少し下って分岐から急な雪田を下りとぎれたあたりで夏道に移り更に下っていくと登ってくる服部パーティと擦れ違う。日向山に着くとH氏が一人テントキーパーで残っていた。風は相変わらず強いが天気は一向に崩れる様子がなく青空が広がりだしてきた。ダムで落ち合うことにして我々は一足先に下山することにする。長い尾根を下って十字峡に着くころには膝が半分笑っている状態だ。十字峡で一休みして更に舗装された道を山菜を採りながら三国川ダムまで歩く。ダムは観光客でずいぶんと賑わっている。自然破壊の象徴のようなダムなんか見て何がおもしろいのだろう。ダムの下に露天風呂があるというので探しに出かけたが、あるにはあったが湯が入っていないので諦める。食堂で酒屋に電話してもらいビールと酒を配達してもらいダムの上まで担ぎ上げる。この日はトンネルの中にテントを張り、採ってきた山菜の天ぷらなどを賞味しつつまたしても大宴会となる。今回は入山から下山までアルコール漬けの山行になってしまった。

5月5日 雨
 ダムまでタクシーを呼んで六日町まで戻る。六日町の温泉を偵察するという佐藤明氏と別れてとりあえず越後湯沢まで出る。駅前の公衆浴場で汗を流し家路につく。
 六日町駅前にある旅館の風呂は、安くてきれいで旅館の人の対応も申し分なくお薦めだそうです(佐藤明氏談)


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