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火打山・妙高山
豊嶋 一人

山行日 1994年7月30日~31日
メンバー (L)高木、川田、小林(偉)、海老原、豊嶋、(飯田)

 上野駅23時58分発急行能登の発車ホームにサラリーマン、OL、そして旅行者が大勢列を作っていた。ホームを歩いていると高木氏、小林氏、今回初めて山行に参加する新入会員の海老原氏が列の先頭に並んでいたのを見つけた。川田氏、そしてこの時点では未入会であったがこの山行のメンバーがすばらしかったので次のルームで入会した飯田氏もしばらくして合流した。運良く全員が座れたが、列車内は非常に混んでいた。
 午前3時過ぎ妙高高原駅に到着した。バスの時間まで3時間ほどあったので、駅で仮眠をとった。海老原氏にとっては初めての経験であったようであるが、うとうとしていた私が目を覚ましたとき、うつぶせ姿で熟睡していたので安心した。高木氏も熟睡していた。これを見習わなくてはいけないと思った。やはり睡眠不足では体が保たない。私にとって良い教訓となり、次回の飯豊では良く寝た。
 バスで1時間ほどで笹が峰ロッジ前に到着した。かなり日差しは強く、これからの山行に対する厳しさが予想された。今回は新人の二人がいるので入会一周年の私は先輩として頑張らなくてはいけないと思っていたのが、結局は私が最初にばててしまった。飯田氏は先週正丸峠まで約100kmを自転車で走ってきたと言うので仕方ないと思うが、日本舞踊とお琴が趣味である海老原氏にも遅れをとってしまったことは情けない。しかし、私の存在は特に高木氏、飯田氏の引き立て役としてはかなり貢献したのではないかと思う。ポロシャツは一度濡れるとなかなか乾かない、しかも重いということに気づいた。翌日はTシャツでさわやかだった。
 富士見平に向かう途中の黒沢まではまだ傾斜もゆるやかだった。沢の水もつめたくおいしかった。ここでしばし休憩をした。自分でも不思議だが私は休憩のときはとても元気になる。今まで重かった足が軽くなり、荒かった息が元に戻ってしまう。写真をとろうというものなら笑顔が出てくる。
 沢から富士見平まではやや傾斜が厳しかった。川田氏、飯田氏、さらに久々に復帰の小林氏、新会員の紅一点海老原氏さえぴったりとリーダーの高木氏についていた。「苦しいところまでは誰でもできるんだ。苦しいところからどれだけ頑張れるかが勝負なんだ」と私がよく生徒に話している台詞を自分自身に言っていた。
 高谷池に着いた。ここで1缶500円のビールを購入して、荷物をデポして火打山に向かった。猛暑・水不足のため少し枯れていたが標高2110mにひろがる天狗の庭という名の湿原はとてもきれいであった。飯田氏がとってくれた写真を見ると美しい風景の中にすてきな笑顔の自分がいた。湿原を過ぎると火打山まで岩がごろごろ転がっており、登りづらかった。歩いているときはとても晴れているのだが、頂上についた頃はガスってきて風景を楽しむことはできなかった。高谷池に戻ったときには雷が鳴り夕立が降ってきた。約40分間ヒュッテで雨宿りをしたが、みんな疲れているらしくうとうとしていた。黒沢ヒュッテまでは下り道でありそんなに傾斜も厳しくなかったので、休んだせいもあったが楽であった。
 黒沢ヒュッテは黒沢池から水を汲み上げていた。黒沢池もかなり干上がっていた。飲み始めてしばらくして雨がやんだのでテントの外に出た。ロマンチックな私は満天の星を楽しみにしていたのだが、曇り空で見れなかった。
 もっと寝ていたかったのだが、まわりのテントが3辞頃から撤収にかかり始めていたので早く目が覚めてしまった。お茶を飲もうとお湯を沸かしていたら黒沢付近に行っていた川田氏が戻ってきた。
 妙高山までの道はまず200mくらい下りる。ということは、200mまた登らなくてはいけない。つり橋でも作ってほしいと思った。大倉池方面と妙高山の分岐にはザックがデポしてあった。下山後大倉池経由で燕温泉に向かうパーティーもあるらしい。分岐点から妙高山を見上げるととても高かった。その日もとても良い天気だったので汗がたくさん流れた。汗が目に入り、眼鏡がすべった。これもいい教訓になった。次回からサーファー用の眼鏡バンド(眼鏡店で売っている眼鏡バンドはダンディな私には似合わないので)とヘアーバンドで解決した。あいかわらず私を除くみんなは弱音をはかない。心の中ではみんな休みたいはずだと思い、みんなのために時々弱音を吐いてあげた私であった。それにしても海老原氏はすごいと思った。あのきゃしゃな体のどこにあのパワーは隠されているのであろうか。
 まだまだ続くと思っていたら、突然頂上だった。私はまた元気になった。天気も良く風景を楽しんだ。後は下りだけだ。昼食後北地獄谷を経て燕温泉に向かった。温泉に入って、冷たいビールを飲んだ。私が山行で一番楽しい時間だ。駅前までタクシーを利用し、お決まりのラーメンを食べ特急に乗った。列車は混んでいた。しかしばらばらだが幸運にもすぐに座れた。川田氏は高崎で降り、小林氏は別の車両に乗っていた。飯田氏と私は海老原氏と並んで座っている高木氏をうらやましく思いつつ、大宮で下車した。飯田氏は今度のルームのときに正式に入会すると言い、ほっとした。飯田氏と別れた後私は、今回の山行の一人反省会をした。いつまでもこんな醜態をさらしていてはいけない。
 「今に見ていろ。俺だって」
 明日に賭ける強い決心をしたのであった。

〈コースタイム〉
30日 笹ヶ峰(7:30) → 富士見平(10:45) → 高谷池(12:30) → 火打山(14:00) → 黒沢池(16:00)
31日 黒沢池(7:00) → 妙高山(12:30) → 燕温泉(14:30)

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