トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ286号目次

飯豊山
大久保 哲

山行日 1994年8月12日~14日
メンバー (L)大久保、谷川、小林(偉)、豊嶋、澁谷、笠原

 8月12日。山都駅を降り、会津バスに乗換え、一路、登山口の川入に向かう。何と、バスの運転手はガイドを兼ね、うねりながら進む車中から、時々遠くに垣間見る飯豊連峰を指しながら、飯豊山の歴史や道中の地名の由来などをガイドしながら進んでいった。約1時間で終点に着き我々を下ろすと、今度は、長靴に釣竿のいでたちで現れた。終点のすぐ脇を流れる沢で、次の発車時間まで釣りをするという。この時期、日に2本しか便がないとは言え、実にのんびりし、おどけた運転手であった。

 時計は9時半をすでにまわり、ギラつく太陽が照りつけるなか、御沢小山まで林道を歩く。暑い。実に暑い。小屋で水を補給し、木陰で涼み、これから進むルートを確認する。ここから登山道に入り、いきなり急登が続く。すぐに全身汗まみれ。体の何処にこんなに水分が蓄まっているのか不思議なくらい、汗がふきだす。この辺も雨がないのか、登山道を歩くたびに砂埃が舞う。暑い。暑い。山も砂漠状態。下十五里にやっと辿り着くが、暑さはますます増すばかり。なおも急登が続く。暑い、苦しい、グリジイー! 信仰の山とはいえ、日頃の行いが悪いのか、汚れたものを拒むのか、暑さと急登でヨタヨタと何とか中十五里に着く。そういえばバスの運転手が車中の説明で、「十五里位歩いたほど疲れる」と言っていた。それが下、中、上と十五里が続くのだ。時計を見ればまだ12時前。これからがますます暑くなる時間だ。先は長いし、ここは水場が近い。おまけにテント10張りは張れる平坦な場所。時間は早いが、リーダーの『独断』と『偏見』と『体調』で本日はここまでとする。早速、銀マットが広げられ、行き交う登山者の不思議そうな視線を浴びながら、荷物の軽量化に努める。

 13日。暑さを避けるため、5時半に出発する。横峰小屋跡あたりまで急登が続き、そこから先は少しなだらかな道になり、途中、地蔵山のピークに続く道と、ピークを捲いて三国岳に続く剣ヶ峰の稜線に出る道とに別れるが、捲き道を行く。(私の地図にはこのルートは載っていない。最近つけられた道らしく、今年出たハイキングマップには両方のルートが載っている)根曲がり竹の切り株に足を取られながら行くと、途中水場があり一息いれる。そこからほどなく登ると地蔵山と三国岳を結ぶ稜線にでる。ここからは展望も開け、剣ヶ峰の岩稜の上に三国小屋も見え、小屋から下ってくる登山者もポツポツと下りてくる。そのなか快調にとばす谷川氏と小林さんの姿もあった。この時間ともなると陽も高くなり、クサリのついた岩場でジリジリと太陽に照りつけられながら、汗だくになりながら、やっと三国小屋の前に出る。

 山頂に立ち展望を楽しめば、遠く磐梯山や会津盆地の町並、大日岳、種蒔山のさらに御国は目指す飯豊山も顔を出している。日陰で涼み先を急ぐが、いまいち調子があがらないのでみんなに先に行ってもらう。先に出発した5人は快調に尾根を進んでいく。途中、クサリ場も何箇所かあるがだらだら登っていくと種蒔山にで、切合小屋も見えてくる。小屋に下って行く途中に雪渓もあり、雪解け水を頭が痛くなるほど飲んで、小屋のテント場に向かう。先に着いた5人はすでにテントを張り終え、飯豊山に向かう身支度をしていた。切合から3時間半の行程なので空身でいくことにする。展望もさらに良くなり、草履塚の手前には雪渓も所々に残り、高山植物も見ることも出来、夏山ならではの楽しみを味わいながら、空身の有り難さに感謝しつつ次第に高度を上げていく。アップダウンを繰り返し、神社の石積みと思われる場所まで登って行くと、神社はもう少し先にあった。本山小屋と飯豊山神社の間につけられた道を抜けると、山頂が目の前に現われ、そこから一登りで山頂に着く。360度の展望が広がる。「とんぼがすごいよ」との声で周囲を見渡すと、今まで気づかなかったが、すごい数のとんぼが空を舞っている。虫網で一振りすれば10匹位すぐつかまえられそうな数だ。とんぼだらけの山頂で十分に展望を楽しみ、残念ながら日本海は確認出来なかったが山頂を後にする。

 切合のテント場までは各自のんびりと下山する。時計も3時半を回り小屋もテント場もかなり賑わってきたが、良いテント場を先に確保していたので、外に銀マットを広げ早速宴会へと突入する。段取り良く、雪渓から雪をとって缶ビール、ワインを冷やし乾杯する。豊富なつまみと豊富な酒で盛り上がるが、疲れも手伝ってか7時半には大人しくテントにもぐりこむ。ひと眠りし、外に人の気配でテントから顔を出すと、満天の星空が広がっている。にわかに全員が起きだして、天体観測会となった。暗闇の中、星雲が広がり時折、流れ星が飛びかう。過去に何度かこのような満天の星空を見たことはあるが、これほどの量の星を、これほどはっきり見るのは初めてだ。しばらく観察(残念ながら星座の知識を持合わせていないので、見物かな)した後、再びシュラフにもぐりこむ。

 14日。その日の朝はまだ暗闇の中での朝食作りで始まった。その日の朝の食当は谷川氏で何故か朝から張切っていた。小屋の方でも暗い時間からもう登山客が出発の準備で忙しなく動き出していた。我々も撤収を完了し5時半に出発する。今日は登ってきた道を下るだけなので気分的にも楽で、先に小屋を出発した登山者をどんどん抜いていく。途中、三国小屋と地蔵山の捲き道の水場でのんびりと休んだものの、後はいつものように、初日の苦労は何処吹く風、三峰下山会でじっとり暑い御沢小屋まで下りてきた。何とその日、切合小屋を4時に出発した女性二人組に次いで、2番目の下山パーティーだった。
 10時半のバスの出発時間まで十分に間に合ったので、後はのんびりとバス停まで歩き、エアコンの効いた車中で時折、返り見る飯豊山の山並を見ながら、山都駅へと向かう。

 (今回の山行報告は、リーダーが初日からバテてしまい、2日目からは谷川氏にその重い大役を譲渡した都合上、谷川氏が書くはずであった。彼が書いて今回の詳細を細かく報告するのが適当と判断したからである。しかし、それは本人が書いて岩つばめに掲載するべし、とのこと。それでは「バテ」という事実を隠し、都合の良いように書くとやり返した。するとすかさず横から女性の声。都合のいいように書いても校正しちゃうもん。ゲッ! 横に二人の編集委員が・・・。そんなわけで今回の原稿を書くしだいになってしまった。バテても、例会山行は必ず原稿をかきましょうね! みなさん。)


トップページ > 岩つばめ一覧 > 岩つばめ286号目次