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踊る米子沢
飯塚 陽子

山行日 1994年10月22日~23日
メンバー (L)福間、澁谷、笠原、飯塚

 今年も最後のしめくくりの沢山行"米子沢"に行ってきました。大雨の中、上野駅に集合した面々は、福間リーダーを始め、山では常にブラックジャージを着用していると噂されている、ブラックジャージ隊の4名であった。
 越後湯沢駅で仮眠をとり、朝六日町へ向かう。雨上がりの六日町駅からタクシーで米子橋へ。空はどんよりとした曇り空であったが、米子橋から望まれる上部の山々は色づき、紅葉がとても鮮やかだ。地図上のナメ沢出合までは、平凡な河原歩きであるが、木々の紅葉が私達の目を楽しませてくれる。ナメ沢を過ぎる頃、ガスが低くたなびいてきて、夏ならば思いっきり楽しめる滝が次々と現れてきたのに、この日の私達はなんとか濡れない様に各自右・左へ、また高捲きルートを探すのであった。さすがにこの季節、水は冷たく寒いのです。それでも沢の中は、私達4人のみの貸し切りで、上部に行くに従い私達も紅葉に染められながら、しめくくりの沢を思う存分楽しむことができたのである。
 お昼過ぎに二俣に着く頃、変わりやすい秋の空は再び雲が払われ、青空から太陽が照らされてきた。濡れた体を暖めてくれる太陽で、ヌクヌクしてしまった私達は、ここでも大休止し暫くお昼寝Timeとなる。 この草原状になっている丘で、あまりの気持ちの良さに澁谷さんは、子供の頃によく遊んだという手を伸ばし寝そべったままコロがるという技で、クルクル回転しながら下まで落ちていった。 (ちなみに沢の中には落ちてません)
 そんなこんなで各自思い思いに、この素晴らしい場所を堪能し、やっと重い腰を上げて今日の幕場を探すことにした。そのまま右俣を進み一帯が池塘と草もみじで覆われ、牧歌的な景色の広がる最高の場所を確保し、静かな夜を過ごすつもりであった。がこの夜は、次第に下り坂の天気がいきなり嵐に変わり、ハタメくテントの中では大声を出さないと他のメンバーの声が聞きとれないという状態。そんな中、今年の沢では恒例となった歌は、この夜も飛び交い、ぷらす福間師匠の踊りの手解き付きで、ハタメくテントに頭を叩かれるという仕打ちを受けながらも、熱心に練習する弟子達の異様な姿は、今思うと嵐の夜にぴったりだったのかもしれない。こうしてしめくくりのはずの沢山行の夜は騒々しく更けていった。
 翌日は風も治まり、ガスってはいたが巻機山を越えて下山にかかる。私達が稜線に出た頃、丁度ガスがきれて上越の山々が現われ、霧氷のびっしり着いた木々から、山の冬支度はもう始まっていることを実感した。井戸尾根の途中から見た米子沢は、昨日の嵐のせいで、轟轟と流れる大滝に変わり、昨日とは全く違う様相になっていた。しかし紅葉に彩られた沢の景観は、鑑賞する側で見れば本当に素晴らしい。一人一人が昨日の平和な沢の思い出を胸にしまい、また来年を期待して一気に尾根を駆け降りた。
 帰りはもちろん六日町の温泉につかり、今年最後の沢山行に満足感一杯で帰京したのでした。

〈コースタイム〉
10月22日(土) 米子橋(7:00) → ナメ沢出合(8:50) → 二俣(13:35) → 幕場(15:00)
10月23日(日) 幕場(8:00) → 米子橋(11:00)

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