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木曽駒・宝剣
大久保 哲

山行日 1995年10月6日~7日
メンバー (L)大久保、藤井

 10月6日、臨時のアルプス85号で木曽福島に向かう。途中、塩尻で餓鬼に向かう「ブラックジャージ隊」+「酒・つまみ命男」の5人と別れ、仮眠をとる。翌朝、中央本線に乗換え、通学ラッシュで賑わう木曽福島に下車。タクシーで木曽福島Aコースの登山口に向かう。

 今回は、藤井氏と2人の山行。コースの途中に立派な避難小屋があるので、小屋泊まり。のんびりと紅葉を楽しもう、ということでやってきた。タクシーで二合目まで入り、そこから登山道を進み、途中の木曽見台で一息いれる。久々に雨ではない。(と言うのも、夏の朝日岳の縦走以来、出掛ける山行は必ず雨にたたられ、ゴアテックスのカッパは、もはや、シミテックス状態になり、雨具としての機能は既に失われているのだ。しかし、またしてもそのカッパを持参しているので、なるべくなら、もう、雨は降ってほしくはないのである)。

 木曽見台では、雲海に浮かぶ御嶽山や乗鞍岳の展望が広がる。藤井氏は、初めて見る一眼レフを手に、しっかりとカメラに収めていた。五合目を過ぎるころには、昨日、頂上小屋に泊まった登山者とすれ違う。聞けば山頂の天気は良い様子。しかし、今日は七合目泊まりなのでのんびりと小屋に向かい、1時には小屋の人となった。この小屋は、木曽福島の観光課の管理になっており、2階からの展望も良く、薪ストーブも備え、おまけに燃料の薪も豊富に備えているのだ。以前、集中山行の時、天気が荒れてたまたまここを利用し快適だった記憶から、今回の小屋泊まり山行となったのだ。早速、場所を確保しストーブに火を入れる。結局、この夜は他に利用者もなく2人だけの貸切となった。(尚、小屋を利用する登山者は、利用管理ノートに氏名、利用日時、ストーブ使用の有無、火の後始末状況を記入するだけで良い。)

 7日。5時半に起床。藤井氏は早速ストーブに火を入れる。氏はこのストーブが気に入ったらしく、昨日からずっとストーブから離れない。朝飯を食べていると雨が降ってきた。また雨か、と出発の準備をしながら外を見ると、なんと雪に変わっていた。昨日、見た紅葉の木曽駒も白く雪景色に一変しているではないか。どうりで寒いわけだ。しかし、小屋を出る頃には雨に変わっていたので、藤井氏はカッパの上下、私は下だけカッパを履き雨傘をさして出発する。出来るだけシミテックスの上着だけは着たくなかったが、稜線に近付くほど吹き付ける風で傘も役に立たなくなり、結局シミテックスの上着を着るはめになる。稜線に出るとすぐに玉ノ窪小屋があり、寒さを避けるため小屋にもぐりこむが、すでに登山客も出発した後で小屋番も奥にいるらしく、閑散としていた。他に3人の登山者が我々が来たコースを下山するらしく、休んでいた。しかし、すぐに素泊まり4500円、休憩200円、トイレ200円の貼り紙が目に飛び込んできた。思わず藤井氏と目線が合い、急に小声になり、「休憩はやっぱり200円かな!」「ンーン。ズブ濡れだからもっとするかも」とのやりとりの後、急にここに居てはならないような気がしたのでしかたなく、風雨荒れくれる外へと。しかし、藤井氏は出入口と反対の奥へズカズカと入っていった。寒さで震えながら待つことしばし。現れた時にはスッキリした様子で、しっかり、休憩200円、トイレ200円の計400円を踏み倒して来たのだった。

 小屋を出て木曽駒山頂には30分もかからずに到着するが、ガスがかかり風も強い。しかし、千畳敷カールを登って来たのか結構登山者(観光客?)が多いので、写真を撮り、そそくさと山頂を後に宝剣岳に向かう。こちらは悪天の為か登山者も少なく、クサリ場の渋滞もなく山頂へと辿り着くが、ここも寒いのと展望もないのでそそくさと退散し、極楽平へと向かう。本来なら、クサリ場のアップダウンも展望があれば、スリルを味わうことも出来るのだろうが、難なく通過。そして、極楽平から空木岳へと続く稜線に別れを告げ、団体の観光客で溢れんばかりの千畳敷駅にいっきに下る。

 そんなわけで今回の山行は、初日のんびり、翌日せわしなく、ただ唯一、貸切の避難小屋でストーブの火のぬくもりにふれる山行であった。


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