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初めての沢登り-シダクラ沢-
渡辺 里子

山行日 1995年6月11日
メンバー (L)水田、飯塚、笠原、澁谷、鈴木(章)、藤井、山沢、渡辺(里)

 6月11日(日)、三峰祭りの翌日である。6時に起き、始発でいらしたアッコさんと奥多摩駅で合流し、西東京バスで出合いへむかう。バスには中高年のハイカーと思われる方々が沢山乗っていたが、沢登りをするために惣岳で下車したのは私たちぐらいであった。
 出合いに下りて、早速、沢足袋、ハーネスをつける。私は沢登りの道具は何一つ持っていなかったので、飯塚さんにお借りすることになったのだが、そこで、アクシデントが起こった。飯塚さんは私に貸してくれる沢足袋は持ってきてくれていたのだが、自分の沢足袋の片方の足を昨日の三峰祭りの現場に(?)忘れてきてしまったのだ。バスで取りに戻るにも今度のバスがいつ来るのかも分からないので、結局、飯塚さんは靴下を2枚履いて登ることになった。
 1級程度の沢なので、ヘルメットは誰も付けていない。水の中にじゃぶじゃぶと足を入れて歩いているうちに、「あっ」もう沢登りが始まっているのかー、と我に返る。沢足袋だと岩や苔の上を歩いても本当に滑らない。足に吸盤が付いているかのようだ。6月に入ったが、まだ水が冷たく感じる。昨日飲みすぎた(失礼!)澁谷さんと山沢さんは辛そうである。最初のうちは水に濡れぬようにと用心していたが、膝まで水につかると、もうどうでもよくなってくる。小学生の頃、わざと深い水たまりを探して、じゃぶじゃぶと足を入れていたあの頃がなつかしい。
 ちょっとした岩などが出てきても、楽しみながら登れたのは、先月の三ツ峠での岩登り講習会のお陰である。やっぱりちょっと水が冷たく感じるので直登はできない。振り返れば、新緑からの木漏れ日が美しい。
 大岩下の二俣で右の谷を登らなくてはならなかったのだが、その上にも似たような大岩があったため(?)道を誤ってしまう。本や地図を見ながらであっても、沢登りのルーとファインディングは難しいのだと感じた。○段の滝、ルンゼ、○mの滝など、実際に沢を登って、それがどこのことをいっているのか、わたしには???である。今後、沢に沢山行き、勉強しなければならないと痛感した。
 沢の終わりから、1時間半ほど薮こぎが続いた。斜面は急なのだが、地面はクッションのようにやわらかく、幾分歩き易かった。とはいうものの、他の皆様方の体力の凄さには驚くばかりであった。アキレス腱を延び延びさせながら、やっとこさで、お昼ごろには惣岳山に着き、昼食となる。どうして、私だけ荷物が少ないのだろう、と登っている最中疑問に思っていたのだが、その訳が分かった。皆のザックから、缶詰やらお菓子など出てくるわ、出てくるわ。こんなに色々なものを持ってきていたのかー。
 頂上では、綺麗な格好をした中高年の登山者の方々が多いなか、薮こごをして泥んこになった沢足袋姿の私たちは明らかに浮いている。でも、あとは尾根を下るだけなので、私らも運動靴に履きかえる。結局、飯塚さんは最後まで片足を靴下で登り切った。物凄いお方である。
 何だか、最初から最後まで、山岳会の方々の行動や体力の凄さ、タフさに驚いていたような気がする。と同時に、自分ももっと体力をつけなければと強く思った。今回初めて沢登りというものを体験して、ある程度は沢登りがどういうものなのかが分かったし、今後もっと、沢登りを追求していきたいなーと思った。


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