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第三回日本山岳耐久レース(24h) 長谷川恒男CUP
小林 健二

 10月7日午後3時、旧五日市町役場において受付。水2リットル、懐中電灯、雨具、行動食をチェックされ、115番のゼッケンを受取る。このレース参加の為、トレーニングを9月2日、五日市より浅間峠22.5kmを歩く。9月9日、数馬より西原峠→三頭山→御前山→御岳→金比羅尾根→五日市と歩く。9月14日、日原より雲取山でトレーニング。9月22日、ロード10km、10月4日、ロード5kmを走った。
 このレースは五日市より今熊神社→市道分岐(775m)→生藤山(990m)→三頭山(1527m)→御前山(1405m)→大岳山(1266m)→御岳(929m)→金比羅尾根→五日市の71.5kmのタイムレースで、制限時間は24時間。私は昨年『限りなき自己能力への挑戦』というキャッチフレーズに共感し、このレースに挑戦。苦しい苦しい思いをして、16時間32分、209位で完走(参加者約1100名、完走率60%)。苦しみよりも完走した時の感激が忘れられず、今年も参加。レースの日にベストコンデションにもっていくという事は非常にむずかしく、昨年は風邪、今年は腰痛(建築関係のアルバイトの影響)。
 エネルギー源の行動食は、いつも色々と工夫する。水の代りにスポーツドリンク、ウエハース、トマトジュース、ミックスジュース、リンゴジュース、せんべい、ビスケット、あんパン、ジャムパン、フルーツゼリー、大福、団子、飴、羊羹、のり巻、いなり寿司等である。
 スタート1時間前に食事をする。腹もちがいい、大福1個、バナナ2本、下痢気味なので正露丸を服用。今年はスタートが午後5時(昨年は午前10時)なので、ほとんど夜中を懐中電灯をたよりに山中を走り廻ることになる。参加者約1200名、服装はバラバラで、山登り姿の人、ジョギング姿の人。背中にはザック(私の場合、装備、食料等で約5kg、これ以上重いと走るのに大変なので軽量化に努力した)。参加者のほとんどがトライアスロンやマラソンの常連で、所謂レースの達人、鉄人である。山屋さんはほんの少々と感じた。
 三峰の野田さん、山本信雄さん、金子さんと健闘を誓い合い、金子さんファミリーの声援を受け、午後5時、スタート。皆んなやっぱり走る走る。私は調子が悪くあまり走れないが、平らな所、下り坂は努めて走る。今熊神社を登った所で懐中電灯を点ける(ヘッドランプでは暗すぎてだめなので、家庭用懐中電灯にシュリンゲをつけ、肩からさげるようにしたものを使用)。
 調子が悪いままで、第一関門の浅間峠22.66kmに9時20分頃着。バーコードでチェックを受け、10分くらい休み、行動食を食べようとするが食べられず、トマトジュースだけ飲んで、笹尾根を三頭山へ向かう。やはり調子が悪い。雨が強くなり、雨具を着用(上着だけ)。目の疲れのせいか登山道がボケて見える。眠気に負け、登山道を少々はずれて膝をかかえ込み、目を閉じて少々眠る。ランナーに「大丈夫ですか」と声をかけられ、我を取り戻して再び歩くが走る元気はない。喘いでやっと三頭山の避難小屋に着く。せんべい少々、団子1本、ビタミンジュースを補給し、正露丸を服用し、トイレに駆け込む。20分くらい休んで、三頭山へ12時30分頃着く。山頂からの下山道は何回となく転んで、鞘口峠へ。ここでもチェック。雨はザアザア降りで、雨の中少々休んで登り始める。苦しいとき役員の「頑張って」の声に励まされ、1kmごとにある赤の回転灯を目指して歩き、やっと第2関門の月夜見駐車場42.09kmに午前2時10分頃着き早々チェック。チェックが多いのでバーコードカードはヒモで首から下げている。ここでは1人2リットルまでの水の補給がある。私は水1リットルに粉末のポカリスエットを溶かし込み、せんべい少々、団子少々、トマトジュースを補給し、水に近いキジを打ち、正露丸を服用し、気合いは入らないが気合いを入れて、御前山へ向かう。駐車場から一気の下り坂、ここはどこを歩いても滑る滑る。一回転ぶと何メートルも滑り落ちる。七転び八起きでこの難所を通過。ここからが頑張り所で、苦しい上り坂を上り、御前山の頂上に午前3時半頃着く。少々休んで前進。我慢できない激しい下痢。急いで登山道すぐ脇で用をたし、先を急ぐ。この下山道も滑る滑る。ここはまた転び場所が泥沼の様になっていて、転ぶと大変と思いつつ何回となくこの泥沼の中に全身を漬ける。もう雨でビショビショ泥沼でグチャグチャドロドロ。でもレース中なので前進、前進あるのみである。ここで枯枝を杖にして頑張るが、この下りは長い。
 大ダワの手前で夜も明けて、懐中電灯のスイッチを切る。大ダワではもみぢの常連、深山さん(レースの役員)の「あと20キロ頑張れ」と励まされる。ボロボロの体に20kmの数字が重いが、ムチを打って奮起する。足がもうダメなので右腕の杖でひっぱる様に歩く。またまた喘いで大岳山山頂。ここまで来る他の参加者も顔は明るい。ここからほとんど下りなので気力だけで頑張る。
 御岳の第3関門(58km)に午前8時ジャストに着く。日の出山の最後の登り、もう雨なんか気にならない。金比羅尾根の登山道が雨のため川の様である。ここを下ればゴールだぞ!と自分に言聞かせ、頑張るがエネルギーを補給していない(体がもう受け付けないのである)。水分だけではパワーが出ない。この尾根は走らなければと思っているうちに3人ばかりに抜かれた。情けない。体がもう限界を越えている様だ。そうだ!と飴を1個口にする。これは効目があった様で、少しずつ走れる様になる。走る走る、戦車の様に、水たまりもものともせず駆け下る。神社が見え、ここからゴールも近いので随分世話になった枯枝の杖を捨て、ハイピッチで走る。ここで何人も抜いて、最後に抜いた外国人の若者と目が合うと後を必死に追い掛けて来る。ゴールまで300m。泥だらけの重い体に更にムチ打って、抜かれずにゴール(約1200名中完走者約600名)。タイムは16時間14分01秒、152位。苦しい苦しいだけだったが、完走後の気持ちは苦しかった分だけ更に感激と充実感でいっぱいでした。その後、私は正露丸の飲み過ぎで胃腸が完全に荒れてしまい、御飯類を口に出来たのは1週間後でした。
 3月3日、千葉県佐倉市でフルマラソンに参加します。練習量が少なすぎて(トータルで55km)、又苦しい苦しい思いをすると思いますが、あの感動を味わいたいと思います。三峰の皆さんも、この感激と充実感を味わう為に、ぜひ山岳耐久レースに挑戦してみてください。


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