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大当り! ガレ場はこわい
縦走 角兵衛沢から鋸岳、甲斐駒ヶ岳
小堀 憲夫

山行日 1995年11月3日~5日
メンバー (L)飯塚、城甲、福間、笠原、渡辺(里)、小林(章)、小堀

 JR飯田線伊那北駅からタクシーに分乗して1時間、戸台に着いた。日蔭にいると震えが来るほど寒い。わき水をポリタンにつめ、公衆トイレで用を済ませて、そそくさと日の当たる戸台川の川原に降りた。広い川原をのんびりと、しかしいつものようにピーチクパーチク歩いて行くと、休憩を入れて2時間程で鋸の分岐に着いた。分岐は少し分かりにくい。左岸の道を行くと対岸に目印があり、道の少し奥に看板があるのでそれと分かる。徒渉して少し長めの一本を取った後、いよいよ角兵衛沢に入る。急な登りが2時間程続くとガレになる。案内書には右岸寄りにつめるとあるが、左岸寄りにも踏み跡があり、やがて右上に角兵衛の大岩が見え始めた。基部へまわりこむと、先行パーティーがちらほらと岩の上でイグアナのように日向ぼっこをしていた。戸台を8時15分に出発して5時間、1時25分にはもう大岩下の岩小屋に着いてしまった。狭いテン場にはもうすでに2張り張ってあったが、どうにかもう2張りテントを張り終え、水の確保を済ますともう夕メシまでやることが無くなった。皆ワインなどをチビリチビリやりながら、イグアナの仲間になって平和な午後の一時を楽しんだのだった。ただし、大岩の直下は要注意。自然落石がブンブンうなりを上げて落ちてくる。もちろん夜は夜で焼肉パーティーで大いに盛り上がった。星がきれいな夜だったなあ。
 翌朝6時30分出発。急なガレ場を飯塚リーダーの巧みなルートファインディングでつめ上がり、角兵衛沢のコルに8時10分に到着した。強い寒風の為休むどころではなく、防寒着をつけ、すぐに凍った狭い馬ノ背に取りついた。やがて小ギャップが現われ、フィックスロープを使い懸垂下降。登り返して鹿窓に着いた。窓の下からは強い寒風が砂をまき上げて吹きつけてくる。窓を通り抜けたすぐ下に懸垂用の支点があるのだが、そこまで行くのが少しいやらしい。手がかりが少なく、足下が細かくガレていて斜度があるので、ズリ落ちるように行くしかない。いやなガレだなと思いつつ懸垂して行くと、案の定ガツンと一発落を食らってしまった。幸いなことに大当りは小堀だけで、毛糸の帽子と石頭のおかげで大したことは無かった。案内を見るとああいう所をクーロアールと言うのだそうだが、あんなしょんも無い所にケーキみたいな名前付けんといてほしいな、ホンマニ。そのクーロアール下から左手の岩尾根に登り返すルートもあるらしいが、我々はトラバースルートを選んだ。また登り返して尾根に出てからは特に危ない所も無く、ピーチクパーチク。リーダーは黒戸尾根の七丈小屋まで行きたかったようだが、行動時間を均等にしろだの、石室に泊ってみたいだの、頭のコブが痛むだのと、結局は早く酒が飲みたいオジサン(一部オバサンいやオネエサン)の声の大きさに負けて六合石室泊まりとなった。石室到着、2時5分。石室は思っていたよりしっかりした造りで、中も広く4テンが四つ張れる大きさ。1人先にプロカメラマンが張っていたのみで、我々は楽に二つテントを張ることができた。女性群は自ら進んで水くみを買って出て、30分もガレを下り、重い水を背負って登って来たのであった。ゴクロウサマ。昨日に引き続き、冬山の軽量食を工夫しているのだという研究熱心な城甲さん特製のシャブシャブもち入り温かスープが、女性群の労を労った。また夕メシ前の平和な一時。しかも今度は夕日に映えるパノラマ付きだった。
 翌朝6時20分出発。寒い寒いと文句を言いながらも時々足を止めて見る遠くの山の眺めの美しさ。甲斐駒頂上7時45分着。大休止。その後は頂上からずっと道案内をしてくれた甲斐犬(この犬は黒戸尾根に住みついている犬だということが後で分かった)と五合目小屋までピーチクパーチク下り、その後は犬に見送られて竹宇神社までピーチクパーチク下り、当然のことながらいつもの駅前温泉&ビールを堪能して帰路についたのだった。
 なお、本記録には、ナベサトちゃんが1人真面目につけていたコースタイムノートをお借りしました。


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