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谷急沢
水田 洋

山行日 1995年11月19日
メンバー (L)水田、菅原、勝部、金子、井上(博)

 11月19日(日)午前11時、我々は妙義山塊の最高峰である谷急山のピークに立っていた。移動性高気圧に覆われた空は雲一つなく風もなかった。目の前に白い絵の具を筆でさっとはいたような浅間山が大きい。遠く北アルプス、上越の山が白く霞んでいる。西上州の山々は幾重もつらなって奥秩父へと続き、眼下には妙義の岩峰が新鮮だ。
 遅くなったが我々とは、『ここいらへんは老後の楽しみにとっておいた』という勝部さん、かなり前から参加を約束してくれた菅原さん、『なんとなく面白そうだから』という金子さん、井上(博)さん、に私である。
 我々は前日(11月18日(土))の午後8時半に東所沢を菅原車で出発、一般道の登山口である裏妙義国民宿舎に10時半に着いた。いつもの金曜夜出とは違い時間に余裕がある分、前夜祭は盛り上がった。とくに菅原さんの魚の一夜干しは絶品だった。
 明けて午前6時、天気がいいぶん外は寒い。沢の身支度をするが馴染まない雰囲気である。車を止めた場所からしばらく林道を歩くと、深沢橋に着きそこから沢に入る。水面を覆い、ナメを埋め尽くす落葉が美しい。回りの雑木林に日が差し込むと水の流れとあいまってタメ息が出そうになる。所々に出てくる滝は水量が少ないのにいずれも大きな釜を持っている。落葉を踏みしめる高捲きも、おつなものだ。注意すれば足を濡らすことはほとんど無い。ただのんびりと沢を歩く。夏のシャワークライムや泳ぎの世界とは違った魅力がここにある。
 奥の二俣を右にとると、水も無くなり薮の中のルンゼを登るようになる。イバラが多いのがいやらしいが、たいした苦労もなく稜線にでた。もう、谷急山は指呼の間である。
 谷急山からは三方境を経て、国民宿舎に戻る。三方境までは地図から想像するよりアップダウンが激しい。木の枝につかまらなければ下りていけない所が多く、山なれしていない人にはチョット厳しい。三方境からは営林署の巡視路になっていて駆け下ることができる。途中自然林の残っている所は紅葉が美しく、自然と足が止まる。日本の山は低山といえども素晴らしく美しいと改めて認識する。
 皆さん足並みが揃っており、車には1時半には着いてしまった。途中、国民宿舎に寄ってビールで乾杯の後、帰路に着いた。時間が早かったせいか渋滞もなく、久し振りに高速道路のありがたさを感じいった次第である。
今回の山行は前夜発日帰りとはいえ、宴会、メンバーの足並み、天気、そしてなによりもいい沢、いい山に恵まれ、中身の濃い充実したものであった。

〈コースタイム〉
登山口発(7:15) → 谷急沢出合(7:30) → 稜線(10:30) → 谷急山頂上(11:00) → 三方境(11:25~12:20) → 登山口着(13:15)

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