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八ヶ岳・赤岳東稜
金子 隆雄

山行日 1996年2月24日~25日
メンバー (L)金子、勝部、小幡

 2月の初旬に例会山行で赤岳東稜へ行ったが、その時は天気が悪くルートが確認できずに敗退して帰ってきた。下山日に晴れてルートが観察できたので今回再度挑戦した。

2月24日 晴れ後曇り、後晴れ
 清里駅からタクシーで県営スキー場の少し先の研修センターまで入る。ここから大門沢沿いの林道を歩き始める。雪は前回来たときより若干増えているような感じだったが、林道終点まではつぼ足で行くことができた。林道上には新しい熊の足跡が県堺尾根側から大門沢に向かって横切るようについておりビビッてしまった。
 林道終点からワカンを付けて沢の中を歩いたが、終始膝下くらいのラッセルであった。すぐに沢は2本に分かれる。左へ行くと沢は真教寺尾根に消えて行ってしまう。前回我々はここでルートが見いだせず引き返した場所だ。薮っぽい右の沢に入りしばらくラッセルを続けるとまた二俣状になっている。ここは赤布がついている左俣にルートをとる。所々水が流れているので踏み抜かないように慎重に進んでいくと、県界尾根から派生する枝尾根に挟まれて谷が深くなってくる。やがて本物の二俣となり右俣へルートをとる。出合いの滝は完全に埋まっていなくてワカンを付けたままでは苦しいので外して登る。右俣を約100mほど登り左の東稜に取り付く。
 東稜は遠くから見るとよくわかるが下半分が樹林帯で雪が深い。樹林の中をひたすら高みを目指してラッセルを続ける。樹林の中にダケカンバが目立つようになってくると樹林帯も終りに近づき、突然のように第一岩峰が現われる。
 時間はまだ早いが寝不足とラッセルでヨレヨレだったので今日の行動はここまでとする。平らな場所がないので急な斜面を削って整地しツェルトを張るスペースを確保してビバーク態勢に入る。崩れかけていた天気も夕方前には回復し夜は満天の星空だった。
 前回もそうであったがこのルートには我々以外だれも入っていなくて静かでとても気分がいい。この喜びをかみしめながらささやかな宴会をおこなう。勝部さんの三峰の歌の披露あり、ピークワンが火を噴くというハプニングありと賑やかに夜は更けていく。

2月25日 晴れ後曇り
 早く出発するつもりで3時過ぎに起きたがなんだかんだで出発は既に日が昇ってからになってしまった。今日は快晴でダイヤモンドダストが朝日に輝いて美しい。
 傾斜がきつくなってワカンが使えなくなってきたのでアイゼンに替えて出発する。第一岩峰は正面を避けて左側をトラバースする。アンザイレンして2ピッチで雪稜上に抜けたが、雪が崩れてなかなか登れず苦労させられた。第二岩峰までは細い雪稜を登る。右俣側は切れ落ちており雪庇の張り出しも少しある。
 第二岩峰も正面を避けて左側から突破する。基部の岩にアンカー用のハーケンを打ち込みアンザイレンして、トラバース1ピッチ、バンド状に上がり、雪壁を斜上し岩混じりの草付きを登ってダケカンバの木でビレイ、後少しで雪稜上に抜けられたのにザイルが足りない。雪稜上に上がりほんの少しで最後の第三岩峰に着く。ここは小さく傾斜も緩いのでハイ松をつかんで直登して抜ければそこは真教寺尾根との合流点だ。ザイルを解いて赤岳へと向かう。赤岳からは地蔵尾根を行者小屋へと下山する。雪が多いためか地蔵尾根はとても下り易かった。
今回の山行は深い雪に苦しめられたが、だれもいないルートを自分達が切り開いていくというとても充実したものだった。

〈コースタイム〉
2月24日 研修センター(7:40) → 林道終点(8:50) → 二俣(10:40) → 第一岩峰下(13:30)
2月25日 第一岩峰下(6:20) → 第二岩峰下(8:50) → 第三岩峰下(11:00) → 赤岳(11:40) → 行者小屋(12:40) → 美濃戸(15:10)
赤岳東稜ルート図

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