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雁ガ腹摺山(楢ノ木尾根~吹切尾根)
水田 洋

山行日 1996年3月30日~31日
メンバー (L)水田、金子、小幡

 3月30日(土) 曇り後雨
 私にとって新年山行以来2か月ぶりの山行、久し振りの山行は普通ウキウキするものであるが、三鷹のアパートを出るときはすでに雨でガッカリである。高尾駅8時発の普通電車に、金子さん、小幡さんとともに乗り込む。
 大月駅で下車、雨は降っていないので予定通り行くしかない。タクシーで登山口の上和田へ、最初は山仕事道を行くが、なかなか尾根に取り付かないので、適当な所で斜面を上がり尾根にでると登山道があった。大峰山に続く稜線には思ったより早く着いたが、ここから先が長く、雨も落ちてきた。いつも元気な小幡さんが二日酔いで、バテ気味である。
 楢ノ木尾根は思ったより踏み跡がしっかりしていて、登山道と変わらない。途中には送電線の鉄塔があり、その巡視路が尾根を横切っている。近くの山並みも土手っ腹を林道でえぐられ、見るに耐えない光景である。送電線を越えると所々笹が深いところも出てきたが、迷うことはない。3時半に大樺ノ頭の手前の1597m付近の笹の切れめに幕を張る。上和田からわれわれについてきた猟犬も結局帰らず、フライの下に潜り込んでいる。小幡さんは酒も飲まずに寝てしまった。

 3月31日(日) 快晴
 低気圧が去って、ピーカンの朝を迎えた。6時前には出発し、大樺ノ頭を超えて行くが笹が結構深い。足元には僅かながら残った雪が、氷となっているためツルツル滑る。8時にならないうちに雁ガ腹摺山の頂上に着くが、500円札の富士山が見事な以外は、なんということもないピークである。しかし、この山行のハイライトはピークではなく、これからの吹切尾根の下降であるはずだ。
 しかし、吹切尾根の取り付きが分からず、笹薮の中を暫く彷徨う。方向が違うと判断し、登り返すと踏み跡があるのでたどっていくと登山道に出た。直ぐに吹切峰への道をさす立派な指導標に出会う。なんと吹切尾根には道が造られていた。嬉しいやら悲しいやら、その道は刈り払われたばかりとみえ、幅2mくらいの一級国道である。
 吹切峰も片面が伐採され、植林直後の茨の薮が多いただの丘であった。砂漠のオアシスのように、薮尾根の中にぽっかりと現れる草原の頂上を期待していた私と金子さんはここでもまたガッカリである。吹切峰を越えると林道にぶつかる、林道と言っても舗装すれば車2台が普通に通れるくらいの立派な道路だ。斜面を切ってあるため、アプザイレンで降りるが、犬には無理でクーンと情けない泣きが入った。なんとか降りられそうな所まで下から誘導してことなきを得た。
 その後も、尾根には踏み跡が付いており、薮をこぐような所はない。1時前には馬立峠につき、この山行もほぼ終わったようなものだと思っていたら甘かった。途中で道が消えたため、沢の中を下降し本流に出て対岸に渡るが、民家とバスの通る道は崖の上にある。地図で確認すると、もうすこし上流にある橋を渡らなければいけないが、暫くして見つけたその橋は、丸太を3本ほど並べただけの粗末なものである。最後は民家の庭から車道に出るとそこにバス停があった。
 バスが来るまで時間があるので、近くの酒屋でビールとつまみを仕入れてのんびり過ごす。最後までついてきた猟犬は、地元のおじさんに預けることになったが、我々が乗り込んだバスを見送るその姿には、寂しさが滲んでいたと小幡さんが語っていた。

〈コースタイム〉
3月30日 上和田(9:30) → 稜線(1139m)(11:30) → 大峰山(12:00) → 大樺ノ頭手前(1597m)(15:30)幕営
3月31日 大樺ノ頭手前(5:50) → 大樺ノ頭(6:40) → 雁ガ腹摺山(7:40) → 吹切峰下の林道(10:30) → 馬立峠(12:40) → 間明野(13:40)

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