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平成八年春山合宿 苗場山及び剱岳周辺
その2 苗場山縦走隊 - 白砂山~佐武流山を越えて -
水田 洋

山行日 1996年5月3日~7日
メンバー (L)水田、勝部、金子、野田、大久保、谷川、服部

 白砂山から苗場山への縦走は、行程を消化するには2泊3日あれば十分である。今回は予備日を1日設けて万全を期したつもりであったが、しかし実際は5日から6日にかけて新潟地方は強い寒波に襲われ、6日の最終下山予定日には吹雪のため視界がほとんどなく下山することができなかった。今後の教訓としたい。

 5月3日 快晴
 アプローチは別記を参照。
 野反湖登山口(9:15) → 稜線上(10:05)
 白砂山へは1619m小ピークの北面を捲き、ハンノ木沢を渡って堂岩山への稜線に取り付く。雪が相当多いといわれた今年でも、ハンノ木沢へは夏道がところどころ露出しており、迷うことは無いだろう。ハンノ木沢の徒渉点には丸木橋が掛かっている。稜線へは少し沢ぞいに戻ってから取り付く。登り着いた稜線は雪原状となっているが、登りで迷うような地形ではない。
 堂岩山(11:55)
 堂岩山へは、幅広の尾根が続く。左手に八十三山が見え、このピークと同じ高さになれば堂岩山である。ここまで登って初めて白砂山が見える。
 白砂山(13:30)
 ここから先は、尾根が東西に走っている上に、南面は白砂川が入り込み急斜面となっているため夏道が露出しているところが多い。しかし、夏道は薮が被り気味で、どろどろで滑りやすく、雪のほうが歩きやすいが、気温の上昇とともに軟雪と化し、ももまで埋まることもある。白砂山へは急登が終わってから先が長い。最高地点と思われるピークは狭く標識も三角点も雪で埋まっているため、佐武流山へのジャンクションピークで大休止とする。
 沖ノ西沢ノ頭(14:50)
 ジャンクションピークからの下りは幅広で緩やかであり、天気が良いとチンタラいける。当初、幕営を予定していた1927m鞍部は他のパーティーがすでに設営していたので、もう少し頑張って沖ノ西沢ノ頭で幕営する。このピークは雪原状で気持ちがよい。この日は一日天気がよく、予定通りの行程を消化できた。

 5月4日 (晴のち曇り)
 沖ノ西沢ノ頭(5:35) → 佐武流山(7:20)
 沖ノ西沢ノ頭を越えると、赤土居山までは右手が断崖状となっていて注意がいる。左手の樹林の中をトラバース気味に行くが、軟雪に苦労する。樹林にはプレートがつけられところどころ踏み跡が露出しており、夏の薮漕ぎの苦労が偲ばれる。赤土居山を越えると西に方向が変わり、グンと歩きやすくなる。佐武流山への登りは見た目より苦労しないが、最高点ピークが一番奥なので疲れる。何の変哲もない樹林の中のピークである。西面は雪原状でどこにでも幕営できそうだ。
 佐武流山までは入山者が多い。かれこれ40人くらいはいたと思うが、中高年ばかりで、雪の状態がどうだろうとアイゼンを着けっぱなしで歩くあたり経験も無さそうな感じだ。百名山ブームの余波なのだろう。二百名山の佐武流山が一番登りやすいのが残雪期だ。人がいないことを期待していた私らが甘かった。
 ナラズ山(11:05)
 佐武流山からの下りは、稜線が北東方向に変わる辺りが、急でわかりずらい。視界が無いときは要注意と思われる。ナラズ山は樹林も疎らで平頂峰で、天気がよいときは昼寝に最適である。
 赤倉山(12:10)
 ナラズ山から赤倉山へは、地図で見るより行程が捗らない。このあたりから雪が多くなってきた。
 苗場山頂上台地末端(13:05)
 赤倉山からの下りは、樹林の斜面から尾根に乗るのが難しい。下りきった鞍部は開けており、幕営にも良さそうだ。時間が早いので先を急ぐ。時間的には、苗場山頂を越えて神楽ヶ峰までは行けたのだが、集中は明日の11時苗場山頂となっており、予定変更を神楽ヶ峰から来ているはずの田原会長に伝えねばならない。しかし、朝から一向に無線がつながらず、苗場山頂上台地末端に幕営する。案の定、夜になって雨が落ちてきた。

 5月5日 (雨のち風雪)
 風は強くならないものの、朝から大粒の雨が落ちている。昼近くには小降りになったが、予備日もあるので停滞とした。この判断が、結果的に1日下山を遅らすことになってしまった。

 5月6日(風雪)
 苗場山頂上台地末端(6:00) → 苗場山頂(7:40)
 今日が最終下山日、とにかく行かねばならない。停滞の甲斐なく、天候は回復していない。前半は、台地の縁を歩いていたが、途中から最短ルートということでコンパスを頼りに歩く。視界は10mもない。方向を定め、とにかく高い方へと歩いていくと、苗場山頂ヒュッテにぶつかった。
 苗場山頂にて行動停止(12:40)
 神楽ヶ峰への下山にかかる。降り口は急なものの、慎重にすれば問題はない。夏道も露出しており、このまま順調に下山できると思った矢先、道が切れている。左手にトラバースするが、尾根に戻る地点が分からない。視界がなく、ホワイトアウト寸前の状態では、滑落等の事故も起き兼ねない。一旦頂上まで戻って、視界が戻るまで様子を見るが、一向に風雪はおさまらない。ラジオの天気予報も今日一杯の悪天を伝えている。
 重苦しい雰囲気の中、行動停止を決断。フォーストビバークとなる。燃料は各パーティー1日分は残っていたが、食料は行動食をすべて集めて7等分する。火の気のないテントでかじるソーセージは、やたらと腹にしみた。「明日も、吹雪だったら・・・・」等と思い巡らし、眠りに就く。

 5月7日 (快晴)
 苗場山(6:00) → 神楽ヶ峰(7:15)
 4時半過ぎに目が覚めた。風は完全に止んでいる。祈る思いで天との外を見ると、快晴なので飛び起きる。昨日の神楽ヶ峰へのルートは間違っていなかった。もう10mもトラバースすれば尾根に乗っていたのだ。しかし、神楽ヶ峰からスキー場への下降は、広い雪原状であり視界が悪いと難しい。「結局、昨日の天候では下まで下り切れずビバークせざるを得なかっただろう」と納得した。
 和田小屋(8:30) → 二居バス停(10:00)
 和田小屋で電話を借り、各人、職場・家庭に連絡を入れる。途中、リフト、ロープウェイを利用して、二居バス停に着いた。スキー場が営業しているので、バス停まで行かないと車が呼べないが、ちょうどバスが来る時間だったので、さっと乗り込む。越後湯沢で風呂に入り、改めて無事下山した喜びを確認した。清算の後解散とし、在来線、新幹線とそれぞれに別れて帰京した。

〈アプローチ〉
高崎駅発(6:09) → JR吾妻線→長野原草津口駅着(7:43) → タクシー(所要1時間強) → 野反湖

タクシー浅白観光自動車 0289-81-2288
ジャンボタクシーで野反湖まで 15,180円

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